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4度目の転生勇者は静かに暮らしたい ~もう魔王討伐は新入り(勇者)に任せたので、俺は美少女たちと諸国漫遊グルメ旅に出ます~  作者: のびろう。
第四章 束の間の平穏と、忍び寄る混沌

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聖女の視線と、旅立ちの準備

俺が背中に(泣きつかれて)くっついたクロエを背負ったまま気まずく振り返ると、そこには聖女セレスティーナが息を切らして立っていた。

彼女はボロボロの勇者や周囲の騎士団の歓声を完全に無視して、真っ直ぐに俺の前に進み出た。


そして。

深々と、一番深いお辞儀をした。


「あ、ありがとうございました!貴方がいなければ…!私達は、間違いなく死んでいました…!」

「お、おいセレスティーナ!?」


健太が慌てて彼女に駆け寄る。

広場の歓声が一瞬止まった。


(え?勇者様たちがあんな泥だらけの冒険者に頭を下げてるぞ?)


群衆の視線がじわりと俺に集まり始める。


(やめろ!やめてくれ!)


俺は心の中で絶叫した。


(俺は目立ちたくないんだ!頼むからスポットライトをこっちに向けるな!)


俺は必死にいつもの『Fランク(今はDランクだったか)冒険者』の胡散臭い笑顔を顔に張り付ける。 「い、いえいえ!俺は何も!活躍したのはそこの勇者様と聖女様じゃないですか!いやーさすが人類の希望ですね!」


完璧な賞賛。

これで群衆の意識も「ああ、そうか!やっぱり勇者様が!」と戻るはずだった。


「え?いや、俺は…」


健太がバカ正直に口ごもる。


「(おい!そこは『そうだ!』って胸を張れよ!主人公だろお前!)」


そして最悪の一言が放たれた。


「違います!」


聖女セレスティーナが、凛とした声で俺の言葉を否定したのだ。

広場がシンと静まり返る。


彼女は俺ではなく俺に抱きついてるクロエ、ララ、ミミの三人を指差した。


「私達を救い、あの四天王ガルーダと本当に戦い倒したのは、彼女たちです!」


「「「「「「「「「「えええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」」」」」」


群衆の驚愕と。

俺の絶望が。

完璧にシンクロした。


(終わったあああああああああああああああああああああああ!!!)

(俺のスローライフが!俺の裏方計画が!このクソ真面目な聖女の一言で全部パーだ!)


健太も慌てて追随する。


「あ、ああ!そうだ!俺も見た!あいつら(クロエ・ララ・ミミ)の連携マジで神がかってたぜ!」 (お前も乗っかるな勇者ぁ!)


群衆の視線が一斉に俺にしがみつく泥だらけの三人の美少女たちに集まる。


「な、なんだって!?」

「あのDランクの『スローライフ希望』が四天王を!?」

「あのボルガを倒し、蜘蛛の巣窟からコネットちゃんを助け出したっていう…!」

「信じられん!だが聖女様と勇者様がそう言うなら…!」


「「「「「「おおおおおおお!アークライトの英雄だ!」」」」」」


歓声の先が勇者パーティーから俺のパーティーに完全に移った。


「へ、へへん!」


クロエが俺の背中で調子に乗って、手を振り始めた。


「ま、まあな!ボクらにかかれば、四天王くらい!」


「にゃはー!ララがやっつけたにゃ!」


ララも俺の腰にしがみついたまま拳を突き上げる。


「うう…!わたくし…英雄ですウサ…!」


ミミは嬉し泣きしている。


(お前らが英雄になったらその師匠の俺が一番目立つんだよバカ!!!)


俺の心の絶叫はアークライトの大歓声にかき消された。


…と、まあ、そんな大騒動の『大監獄』事件から数日が経った。

俺たち『スローライフ希望』は一躍『アークライトの英雄』として街の有名人になってしまった。


ギルドではクロエ、ララ、ミミのDランクへの昇格が正式に決定した。


(まあ四天王の一角を倒したんだ。当然か)


さらにあのダンジョンで助け出した貴族(クレメント侯爵の縁者とか言ってたデブ)から多額の謝礼金(金貨で袋パンパン)と、「これぞ!クレメント家の紋章だ!これがあればどこの街でも身分の保証になるぞ!」 という非常にありがたい(スローライフに役立ちそうな)アイテムまで貰ってしまった。


(……うん。目立ったのは最悪だが実利はデカい。これはまあいいか)


俺がギルドの酒場で(コネットさんにまた抱きつかれるのが面倒で)一人反省会をしていると。


「――待ってくれ!ユート殿!」


(……出たな)


俺を呼んだのは、すっかり怪我も癒えたらしい勇者・佐藤健太と聖女・セレスティーナだった。


「あ、あのさ!」


健太が気まずそうに頭を掻いている。


「色々悪かったな!助けてくれてサンキュ!それと…その偉そうに悪かった!」


健太は深々と頭を下げた。


(お、意外と素直だなこいつ。根は悪くない『THE・勇者』か)


「あ、あの!」


今度はセレスティーナが一歩前に出た。


「わたくしたち力不足を痛感いたしました…。あのガルーダが言っていた『魔王』のこと…わたくしたちもっと強くならなければ…!」


(はぁ。だろうな。お前らが強くなってくれないと俺のスローライフが始まらないんだよ)


俺は盛大にため息をつくと、懐から小さな対の魔道具の石を取り出した。


(女神チャットとは別の3周目に作ったただの通信機だ)


「これ持ってけ」

「?なんだこれ」


「通信機だ。片方は俺が持ってる。……まあ万が一、本当に万が一、死にそうになったら連絡して。気が向いたら助けに行ってやるから」

「お、おう!サンキュ!」


健太が嬉しそうにそれを受け取る。


「あと、勇者君」

「健太だ!」

「健太。お前はレベルばっかり上げてないで基礎の素振りをしろ。話はそれからだ。聖女さん」

「は、はい!」

「お前は魔力の操作が雑すぎる。回復は量じゃない質だ。その辺りの騎士団のオッサン捕まえて、魔力コントロールの基礎を教われ」


「「うぐっ…!」」

「「は、はい!ありがとうございます!」」


二人は俺の的確すぎるアドバイスに、目から鱗が落ちたという顔で再び深々と頭を下げた。


(やれやれ。これで少しはマシになるだろ)


俺が席を立とうとすると、セレスティーナが何か言いたそうに俺を見つめていた。


(……ん?)


(……なんだかすごい熱い視線を感じるが)

(……気のせいか)


俺はその(非常に面倒くさそうな)聖女の熱視線を完璧にスルーすることに決めた。


「ううむ、なんだかすごく目立ってしまったけど…まあいいか」


ギルドを出た俺は空を見上げる。

色々想定外すぎたがDランクにも上がれた。

金も紋章も手に入れた。


(これでやっと旅に出発できるかな)


俺は宿屋で俺の晩御飯を今か今かと待っているであろう三匹の腹ペコ英雄たちの顔を思い浮かべ、苦笑いした。


「さて、それじゃあ」


俺は宿に向かって歩き出す。


「まずは、ミミの故郷の手がかりを探しに行きますか!」


いよいよ、俺の望んだものとは全く違う、楽しくも騒がしい旅が始まる。

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