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4度目の転生勇者は静かに暮らしたい ~もう魔王討伐は新入り(勇者)に任せたので、俺は美少女たちと諸国漫遊グルメ旅に出ます~  作者: のびろう。
第四章 束の間の平穏と、忍び寄る混沌

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スープはダンジョンの常識です

「「「やったあああああ!(にゃ・ウサ)!」」」


光の粒子が舞う中、三人が抱き合って勝利を喜ぶ。

その光が収まった時、彼女たちの体(特に魔力)が、明らかに一段階底上げされているのが分かった。


(……やれやれ。これで、ますます、俺のスローライフが遠のいた)


俺が一人だけ(最強すぎて)レベルアップもせず背後で腕を組んでいると。


「……あ……」


か細い、しかし聞き覚えのある声がした。

俺が(背後の非戦闘員グループに)振り返ると、そこにはミミの回復魔法で完全に意識を取り戻した、あの狐耳の受付嬢――コネットさんが座り込んでいた。


「……ユート、さん…?」


彼女は目の前で起こったこと(Bランク級魔物の討伐)が信じられない、という顔で俺と泥だらけの三人を交互に見ている。


「コネットさん。無事でよかった」


俺がいつもの(Fランク冒険者用の)人畜無害な笑顔で手を差し伸べると。


「…………っ!」


コネットさんは、その手を取らなかった。

代わりに。


「――ユートさあああああん!」


「うおっ!?」


彼女は、俺が予測できなかった軌道で立ち上がり、俺の胸に全力で飛び込んできた。


ドフッ。


(……柔らかい)


俺の(隠れマッチョな)胸にコネットさんの(非戦闘員らしい)豊かな胸が容赦なく押し付けられる。 俺の腕の中で、彼女はわんわんと子供のように泣きじゃくり始めた。


「うわあああん!こ、怖かった…!怖かったですぅ…!」

「(あ、ああ、うん。怖かっただろうな)」

「蜘蛛に巻かれて…!もう死ぬんだって…!ユートさんの顔が最後に浮かんできて…!」


(((……ん?)))


俺の脳内ツッコミと。

俺の背後で勝利に浸っていた三人の空気が同時に固まった。


「……(ギュウウウウウウウウウウウウウウ!)」


コネットさんは俺の背中に腕を回し、恐怖から逃れるようにさらに強く抱きついてくる。

そのふわふわの狐尻尾が俺の足に絡みついてくる。


(……あ、これ、ヤバい(物理的に))

(いや、それよりも)


俺はゆっくりと(怖くて)振り返れなかったが、背後から刺さる三つの視線(殺気)を肌で感じていた。


(……あ、これ、ヤバい(社会的に))


「…………じーーーーーーーーーっ」


(クロエの『何やってんだこのエロ師匠と泥棒狐』という絶対零度の視線)


「…………じーーーーーーーーーっ」


(ララの『お兄ちゃんの胸…!ララの『抱き枕』なのに!ずるい!ずるいにゃ!』という純粋な

嫉妬の視線)


「…………じーーーーーーーーーっ」


(ミミの『あ…あわわわ…。わ、わたくしだってユートさんに抱きつきたいのに…!あの狐の人大胆ですウサ…!』という羨望と嫉みの視線)


俺の脳内がカオスだ。


「こ、コネットさん!もう大丈夫だから!ひとまず離れ…」


「いやです!絶対離れません!ユートさんがまたどこか行っちゃう!」


(あ、これ、完全に吊り橋効果(+命の恩人補正)でフラグがカンストしたやつだ)


俺がこの(温かくも、針の筵の)状況をどう打開しようか迷っていたその時。


「――いい加減にしろ!」


バリバリバリ!


(物理的な音がした)


クロエがついに、我慢の限界を超えた。

俺の背中に回されていた、コネットさんの腕を掴むと容赦なく引き剥がしにかかった。


「ひゃっ!?ク、クロエさん!?何を!?」


「何を、じゃねえよ!いつまでくっついてんだこの泥棒狐!」


「(ど、泥棒狐!?)」


「なっ…!泥棒とは、何ですか!わ、私は命の恩人のユートさんにお礼を…!」

「お礼なら口で言え!師匠に色目を使うな!」

「い、色目なんて…!」


(……あー。もう。面倒くさい)


俺は、俺を挟んでギャーギャーと(低レベルな)言い争いを始めた二人クロエとコネットに割って入った。


「はいはい!そこまで!二人ともうるさい!」


俺が、ビシッと手で制すると二人は「「うぐっ…!」」と口をつぐんだ。


「まったく…。せっかくボスを倒したのに仲間割れか?(ララとミミも、不満そうに頬を膨らませてるし…)」


俺はこの最悪な(ハーレム的な)空気を一掃するために最強のカードを切ることにした。


「……はぁ。まあいい。一旦、休憩だ」 俺は何もないダンジョンの床にインベントリから『キャンプセット(もちろん、3周目の快適仕様)』を取り出した。


「「「「え?」」」」


クロエも、コネットさんも、ララも、ミミも(ついでに、貴族たちも)、目を丸くする。

俺は彼女たちを無視し、手際よく『携帯コンロ』に火を点けた。


「激戦の後は温かいスープが一番だろ」


俺はインベントリから仕込み置きの『栄養満点・野菜と肉のコンソメスープ』が入った大鍋を取り出し火にかけた。


グツグツグツ…。

一瞬で。


この陰湿な蜘蛛の巣ダンジョンに場違いなほど『幸福』で『優しい』匂いが充満した。


ぐぅぅぅぅぅ…。


「「「「あ」」」」


音の発生源は、クロエ、ララ、ミミ、そして、コネットさん、四人のお腹だった。

四人は顔を見合わせ、そして一斉に真っ赤になった。


「(……よし。これで頭も冷えただろ)」


俺は完璧な『胃袋外交』に満足しながら全員にスープを配った。


温かいスープで、緊張と嫉妬(?)の糸がほぐれた俺たち一行。


(貴族たちは隅で勝手に食わせている)


「さて。落ち着いたところで攻略再開だ」


俺が立ち上がると、ララとミミも、元気よく立ち上がった。

さっきのレベルアップで全快している。

クロエも、コネットさんも、回復した(コネットさんは戦闘は無理だが)。


そこからの俺たちの進撃は早かった。


「クロエ、右!」

「ララ、左!」

「ミミ、詠唱!」


俺の指示はもはや不要だった。

あの大蜘蛛との死闘を乗り越えた三人は、「(ユートなら、こう、言う!)」「(ララちゃん、こっち、来る!)」「(ミミ、シールド、お願い!)」 と、阿吽の呼吸で連携し残りの雑魚魔物たちを一掃していった。


コネットさんは、その後ろを俺に守られながら、ポカーンと口を開けてその光景を見ていた。


「(……すごい。あの子たち、この一ヶ月でこんなに…?全部ユートさんが教えたの…?)」


そしてついに。


俺の【索敵】が、最深部への扉を捉えた。


「……止まれ。この奥だ」


俺が手で制すると、三人も息を潜める。


(……ん?)


俺の耳(カンスト済み)が扉の向こうから聞こえてくる剣の音と詠唱の声を捉えた。


(……あ、ヤバい。先に入ってる)


俺の【索敵】マップでは、まさに今、『勇者パーティー』(佐藤健太と、聖女セレスティーナ)がボス部屋に行こうとしているところだった。


「(チッ!間に合わなかったか!)」

「ユート、どうした!?」


「……面倒な先客がいるらしい」


俺はため息をつき、ボス部屋への大扉を静かに押し開けた。


「お前たちはここで待機だ。コネットさんたちを守ってろ」

「「「え!?」」」


俺は一人、部屋の入口の物陰に身を潜め中の様子を窺った。


そこでは。

案の定、聖女セレスティーナと勇者の佐藤健太、そして数人の(ボロボロの)騎士団が多数の魔族(雑魚)と激戦を繰り広げていた。


「(……うわぁ。ヘタくそ…)」


俺はその戦闘のレベルの低さに再び頭を抱えた。


(勇者は力任せに突っ込むだけ。聖女は後ろで回復が間に合ってない。騎士団は二人を庇って消耗しきってる)


(……まあ、でも、あの雑魚魔族の数ならなんとか殲滅はできそうだが…)


俺が高台から見下ろしていると、健太が最後の一体を聖剣らしきものでなぎ払った。


「はぁ…はぁ…!ふん!今度こそ終わりか!」


健太が勝利を確信したその瞬間。


(……いや。今からが本番だ)


俺の予測通り。

倒された魔族たちの死骸が触媒となり、黒い霧となって一箇所に集まり始めた。


「な、なんだ!?」

「セレスティーナ!下がれ!」


空間から凄まじい『圧』と共に、一体の高位魔族が顕現する!

鳥のような鋭い翼を持つ人型の魔族。


「我が名は“疾風のガルーダ”。新米勇者よ、貴様の成長を止めるのが我が使命よ!」


(……やれやれ。お出まし、か)


俺は物陰で大きくため息をついた。


(どうするかな、これ)

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