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4度目の転生勇者は静かに暮らしたい ~もう魔王討伐は新入り(勇者)に任せたので、俺は美少女たちと諸国漫遊グルメ旅に出ます~  作者: のびろう。
第四章 束の間の平穏と、忍び寄る混沌

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スローライフ、強制終了のお知らせ

ギギギギギ……!


空間が歪む耳障りな音。


「「「きゃあああああああ!(にゃあああ!)(ウサあああ!)」」」


俺が「装備を整えろ!」と叫んだ直後のこの異常事態。

三人はこの一ヶ月の訓練の成果かあるいは生存本能か、パニックになりながらも指示通り戦闘装備(昨日買ったばかりのピカピカのやつ)だけは完璧に装着していた。

だがその(可愛い)戦闘装備のまま三人が(なぜか)俺に必死にしがみついてくる!


(重い!揺れとお前たちの重さで、俺の体幹が試されるだろ!)


どれほどの時間だったか。

永遠にも感じられた激しい揺れがふっと、まるで何事もなかったかのように収まった。


「…………」 「…………」


宿屋『旅人の羽』の一室。

部屋は奇跡的に昨夜の状態を保っていた。

床には旅立ちのために完璧にパッキングされた荷物(主に鍋と肉)がそのまま残っている。


「……い、いった…。何だ今の…地震か…?」


クロエが俺の背中に(いつの間にか)しがみついていた体勢から、ふらふらと離れる。

彼女の『闇夜の革鎧』が不安げに揺れた。


「お、お兄ちゃん!こ、怖かったにゃあ!」

「わ、わたくしたち、生きて、ますウサ…?」


ララとミミも俺の両腕に(がっちりと)抱きついていた状態から涙目で顔を上げた。


(……やれやれ)


俺はそんな三人の(ある意味、大物な)姿を見下ろし静かに三人を引き剥がす。

そしてこの(4周目にして最大の)失態を認め頭をガリガリと掻いた。


「あー。……うっかりしてたわ」


「「「はあ!?」」」


三人の声が綺麗にハモった。


「『うっかり』じゃねえだろ、今の!天地がひっくり返るかと思ったぜ!」


クロエが、心底信じられないという顔で俺に詰め寄る。


(いや違うんだクロエ)

(『うっかり』してたのは地震じゃない)

(昨夜お前たちの温もりに包まれて、俺の【索敵】スキルへの『意識』が完全に『弛緩』していたことだ)


3度の人生で、ただの一度もあんな『平穏』な眠りを知らなかったから。

完全に油断していた。

それが俺の『うっかり』だった。


俺が4周目の人生(の教訓)を胸に刻んでいると、ララが震える指で窓の外を指差した。


「そ、外!窓の外がヘンだにゃ!」


「「?」」


俺とクロエ、ミミも一斉に窓へと視線を向ける。

朝だ。

だが窓から差し込む光は太陽の『白い光』ではなかった。

不気味な禍々しい『紫の光』だった。


クロエがゴクリと唾を飲み、代表して窓に近づきカーテンを勢いよく開け放った。


「……………嘘だろ」


クロエが絶句した。

俺たちの目の前に広がるべきだった、アークライトの『街並み』はそこには無かった。


代わりに窓の外いっぱいに広がっていたのは。

ゴツゴツとした不気味な『紫色の岩肌』そしてはるか上空(?)に天井のように張り付いた、同じ『紫色の岩盤』だった。

俺たちがいるこの宿屋ごと、巨大な『地下の洞窟』のような場所に閉じ込められていた。


「な……な、なんだよこれ…!」

「お、お空が、ない、ですウサ…!」

「にゃあああ!閉じ込められたにゃ!」


三人が一斉にパニックに陥る。

俺はそんな三人の背後で、一人静かに盛大にため息をついた。


(……はぁ)

(やっぱりこれか)


俺はガリガリと再び(ほんきで)頭を掻く。

そして意識を集中させカンスト済みの【索敵】スキルを最大出力で起動させた。


(……なるほどな)


一瞬だった。

この異常な空間の全貌が、俺の脳内に3Dマップとして完璧に描き出されていく。


(術式は『大監獄』。空間固定型の大魔術)

(規模は街の中央広場を中心にした半径500メートルの球状ダンジョンか)

(構造は螺旋状の階層タイプ。宿屋ここはたぶん第一層の外縁部)

(出口は最下層に一つだけ)


俺はマップをさらに拡大する。


(……うわぁ。相変わらず性格が悪い)

(罠と魔獣が、嫌らしい配置でびっしりだ)

(この第一層を抜ける螺旋通路の三つ目の角。ここ絶対に『落とし穴』だろ。その下にゴブリンの群れ配置しやがって)

(第二層は毒の沼か。面倒くさい)


(……ん?このパターン)


俺は記憶の底からデジャヴを引っ張り出す。


(……ああ思い出した。これ2周目(大賢者)の時に攻略した『魔王軍・第7実験ダンジョン』の設計思想とそっくりだ)

(前の回でも似たようなのがあったな…)

(まったく芸がない。1000年経っても魔族の『発想』は進歩しないのか)


俺が一人、ダンジョン・ソムリエのようにその(古くさい)設計にダメ出しをしていると、俺の【索敵】が最下層の中心で、ひときわ強大な魔力の『反応』を捉えた。


(……ああ。やっぱりな)

(鎮座してやがる。ご丁寧に『出口の門番』として)


間違いない。

この陰湿で冷たくて圧倒的な『圧』。


(……四天王クラスが一体)


俺は三度、盛大にため息をついた。


(……はぁ。俺の旅立ちの朝が)

(『朝食→出発→諸国漫遊』の完璧な『スローライフ・ルート』だったはずが)

(『ダンジョン攻略→四天王討伐→(たぶん)勇者パーティーのお守り』っていう一番面倒な『ハードモード・ルート』に分岐しやがった)


(……俺のうっかりの代償はデカすぎるだろ…!)


俺は4周目にして、本気で頭を抱えたくなった。

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