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4度目の転生勇者は静かに暮らしたい ~もう魔王討伐は新入り(勇者)に任せたので、俺は美少女たちと諸国漫遊グルメ旅に出ます~  作者: のびろう。
第三章 涙の誓いと、育成計画のはじまり

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最強師匠と、ご褒美ディナー

「「「…………(ぜえ、はぁ、うう…)」」」


アークライト近郊の森。

あの日から、俺たちの『実戦特訓レベリング』が始まって、一週間が経過した。


そして今、夕暮れの帰り道。

そこには、三体の「何か」が、泥と汗と(たぶん)魔物の体液にまみれて、地面をうように歩いていた。


「……にゃあ……。もう、一歩も、歩けないにゃ……。お腹と、背中が、くっつく……」


ララが、文字通り四つん這いになりながら、悲痛な声を上げている。


「……ユート……お前、マジで鬼かよ……。あのオーク、絶対Eランクじゃなかっただろ…。Cランクの『闇蛇』より、よっぽど、強かった、ぜ……(ぜえ、はぁ)」


クロエも、愛用のミスリル短剣を杖代わりにして、かろうじて立っているのがやっとだった。


「う、うう……。わたくし、ちゃんと、ヒール、できてました、ウサ…? もう、魔力、一滴も、出ません……」


ミミに至っては、ララの背中に(半分乗っかる形で)しがみつき、涙目で訴えていた。


(……やれやれ)


俺は、そんな三人の(地獄絵図のような)姿を、一人だけ、ピンシャンした姿で(もちろん、俺は一切戦闘に参加せず、指示とサポート(超絶技巧)に徹していたためだ)振り返る。


(まあ、上出来か)

(クロエは、俺の指示カンニング無しでも、オークの『誘い』を見抜けるようになり始めた)

(ララは、『獣化』のコントロールを覚え、ミミを守りながら、的確に敵の『核』だけを狙えるようになった)

(ミミは、泣き言を言いながらも、絶対に『詠唱』を止めなくなった。あの『聖域の盾』は、もはやEランクのそれじゃない)


彼女たちの成長スピードは、俺の(4周目の)目から見ても、驚異的だった。

だが、当然だ。


俺の『最強育成プラン(3周分の知識の結晶)』は、常人が(安全マージン確保のために)省く、膨大な量の「実戦」と「(俺による)超高効率のフィードバック」で構成されている。

その分、疲労も、空腹も、尋常ではない。


「……ほら、着いたぞ。さっさと宿に戻る」


「「「(……!)」」」


俺が『宿屋』という単語を口にした瞬間。

さっきまで死体同然だった三人の目が、カッと、見開かれた。


「「「メシだあああぁぁぁ(にゃああ!)(ですウサ)!」」」


三人は、残っていた生命力の全てを振り絞り、俺を追い抜いて宿屋の階段を駆け上がっていく。


(……現金な奴らめ) 俺は苦笑いしながら、その後に続いた。


宿屋のドアを開けた瞬間、三人を包み込んだのは、暴力的なまでの「幸福の香り」だった。


(もちろん、俺は【時空魔法(Lv.MAX)】の応用で、訓練の合間に、一度宿に戻って仕込みを完璧に済ませていた)


「「「(((ゴクリ)))」」


「うおお! この匂い! 醤油とニンニク! そして、この、甘酸っぱい香りは…!」

「お肉! お肉だにゃ! 今日は、いっぱいお肉だにゃ!」

「あ、あの…スープの匂いも、しますウサ…。すごく、体に良さそうな…」


三人が、泥だらけのまま食卓に飛びつこうとするのを、俺は片手で制止する。


「待て。風呂シャワーが先だ。そんな泥だらけで、俺の神聖な食卓ディナーを汚すな」


「「「えええええええ!」」」

「今すぐ食わせろ!」

「お兄ちゃんのケチ!」


「うるさい。俺が作った料理への『敬意』が足りん」 俺が、ジロリと(少し本気で)睨むと、三人は「うぐっ…」とひるむ。


(((メシ抜きにされたら死ぬ!)))


三人の心が、再び一つになった。


「「「ただいま戻りました! 先に、お風呂、いただきます!(にゃ!)(ウサ!)」」」


彼女たちは、ギルドで訓練された兵士よりも機敏な動きで、共同シャワー室へと消えていった。


数分後。 湯気を立てながら、髪を濡らした三人が、部屋着(俺が買ってやった)に着替えて、食卓に勢揃いした。


「「「お待たせしました!(にゃ!)(ウサ!)」」」


「よし」 俺は、待ってましたとばかりに、大皿をテーブルの中央にドン、と置いた。


「うおおおおお!」

「にゃあああ!」

「わあああ…!」


三人の歓声が、安宿の部屋を揺るガす。

そこには、山のように盛られた、熱々の湯気を立てる肉料理。


「今日のメインは『グレート・ワイルド・ボアの黒酢(?)風ミツキノコ炒め』だ」


(※黒酢は無いので、醤油と酸味の強い果実、蜜キノコでそれっぽく再現した、俺のオリジナルだ)


「それと、こっちは『ロック・チキンの薬膳やくぜんスープ』。


3周目に大陸の西で覚えた、疲労回復の秘伝のレシピだ。

もちろん、米も炊けてる」


「「「いただきます!(にゃ!)(ウサ!)」」」


もはや、そこは戦場だった。

クロエは、甘酸っぱいタレが絡んだ、分厚い、しかしトロトロに柔らかい猪肉を、米(もちろん炊きたて)にワンバウンドさせ、口いっぱいに頬張る。


「(んぐっ! あふっ!……くぅぅぅ! うめええええ!)」


(この、疲れてクタクタになった体に、の酸味と、肉の脂が、染み渡る…! 米が、米が止まらねえぜ!)


ララは、もはやスプーンを使い、黒酢あんごと、米にかけて「即席・角煮丼(?)」にして、かきこんでいる。

「(もぐもぐもぐもぐ!)……にゃふー! おいしい! お肉、とろけるにゃ! ララ、これなら、あと三皿はイケる!」


ミミは、まず、黄金色こがねいろに輝く薬膳スープを、両手で持ったカップでそっとすする。


「(……はふぅ……)……おいしい、ですウサ……」


(あったかい…。さっきまでの訓練の疲れが、全部、溶けて消えていくみたい…。ユートさんのスープ、世界一、ですウサ…)


毎日、泥だらけでクタクタになって宿屋に戻る。 地獄のような(俺からすれば準備運動レベルの)訓練。 だが、そこにはいつも、ユートの作る温かくて、常識外れに美味しくて、そして、自分たちの体を完璧に理解してくれている「栄養満点の食事」が待っていた。


この「ご褒美ディナー」こそが、彼女たちの何よりの楽しみであり、あの過酷な(と彼女たちが思っている)訓練を乗り越えるための、唯一無二の「心の拠り所」となっていった。


「……ぷはー! 食った食った!」

「……お腹、いっぱいで、しあわせだにゃ…」

「……ごちそうさま、でしたウサ…」


あっという間に、山だった大皿料理と、鍋いっぱいのスープが、綺麗に空になった。

三人は、満腹になったお腹をさすりながら、満足そうに、床に(行儀悪く)寝転がっている。


(……やれやれ。片付けるのが面倒くさいな)


俺が、空になった皿を(一人だけ)片付け始めると、クロエが、寝転がったまま、だるそうに声をかけてきた。


「……あーあ。しかし、今日のユートも、鬼だったな…」


「鬼? 俺は、一度も手を出してないだろ。指示アドバイスしただけだ」


「その指示アドバイスが、鬼なんだよ!」


クロエが、ガバッと起き上がる。


「今日の訓練の反省会だ!」

「げっ! メシ食った後くらい、休ませろよ!」

「うるさい。食って満足したら、頭が回るだろ。……クロエ、お前、最後のオークへの飛び込み、タイミングが0.5秒早かった」


「う……! だ、だって、アイツが隙を見せたから…!」

「あれは『隙』じゃなくて『誘い』だ。お前のスピードを誘い込んで、カウンターでララを狙う、常套手段だ。3回死ねば分かる」


「(また言ってるにゃ…)」

「(ユートさん、何回、死んでるウサ…?)」


ララとミミが、ヒソヒソと(俺には丸聞こえだが)噂している。


「次、ララ」

「は、はいにゃ!」


「お前は、ミミが詠唱してる時に、ミミの前に立ちすぎだ。お前の背中で、ターゲットが見えなかったらどうする?」

「う……! だ、だって、お姉ちゃんを守らないと…!」

「守ると、邪魔するは違う。ミミを『信じろ』。それがパーティだ」

「……むう。……はいにゃ」


ララが、不満そうに、しかし納得したように、虎耳を垂らした。


「……最後、ミミ」

「は、はいぃっ!(ビクゥ!)」 ミミが、兎耳を(また)ペタンと伏せて、固まる。

「……お前は、今日の『ヒール』、良かったぞ」


「……え?」


「「え!?」」


クロエとララが、意外な(俺からの)褒め言葉に、目を丸くする。


「ララが(俺の指示で)囮になった時、パニックにならずに、ちゃんと詠唱を(0.2秒遅れたが)完遂させた。あのタイミングは悪くなかった」


「……!」


ミミの顔が、ぽわっと、夕焼けのように赤く染まった。


「あ、ありがとうございます、ウサ…! えへへ…」


彼女は、その長い兎耳を、嬉しそうにぱたぱたと揺らした。


(……ちょろい。ちょろすぎる)

(いや、俺の『あめむち』の使い方が、カンストしてるだけか)


俺が一人で納得していると、今度は、さっきまで反省していたはずの三人が、完全にリラックスした(図に乗った)顔で、俺に詰め寄ってきた。


「ちぇ。ミミだけずるいぜ」


クロエが、俺の隣に(当たり前のように)あぐらをかく。


「なあ、ユート、明日の訓練、もう少し手加減しろよな! ボクら、かよわい女の子だぜ!」


「そうだそうだ!」


ララが、反対側から俺の腕にしがみつく。


「明日は、もっとお肉いっぱい食べたいにゃ! 訓練したらお腹すくんだから! 報酬、全部、お肉代にするにゃ!」


「あ、あの…」


ミミが、おずおずと、俺の(空いている)服の袖を、ちょんちょんと引っ張る。


「ユートさん…。わたくし、明日は甘いものが…食べたいですウサ…。あの、『ハーブクッキー』みたいな…」


「(わがまま言い放題かよ!)」


俺は、頭を抱えた。

右腕にはララが、左腕にはクロエが、服の袖はミミが。

いつの間にか、俺は、三人の美少女に、完全に、物理的に、包囲されていた。


(……うるさい)

(……騒がしい)

(……俺の、静かで、平穏な、スローライフは……)


俺は、目の前で「明日の晩御飯」の献立について、「ボクは肉だ!」「ララも肉だにゃ!」「わたくしは、甘いもの(デザート)も、欲しいですウサ!」と、俺を(なぜか)挟んで、ギャーギャーと(楽しそうに)言い争いを始めた三人を見つめる。


(……これは、もう)

(『パーティ』とか、『訓練』とか、そういうんじゃないな)

(……ただの、騒がしい、『家族』の、食卓だ)


俺は、その、あまりにも「平穏」とは程遠い、しかし不思議と「温かい」喧騒の中で誰にも聞こえないように、小さく息を吐いた。


「……やれやれ」


その表情は呆れつつも、どこか満更でもない笑みを浮かべていたのかもしれない。

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