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4度目の転生勇者は静かに暮らしたい ~もう魔王討伐は新入り(勇者)に任せたので、俺は美少女たちと諸国漫遊グルメ旅に出ます~  作者: のびろう。
第三章 涙の誓いと、育成計画のはじまり

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最強師匠の、スパルタ?ブートキャンプ

「育成計画、第二弾!――実戦特訓レベリング、開始だ!」


俺が、ギルドで(半ばヤケクソで)そう宣言してから、数日が経過した。

パーティー『スローライフ希望ウィッシュ』の、記念すべき初陣(という名の訓練)の地は、もちろん、あのアークライト近郊の森。

俺がクロエと出会い、そして(食材調達のついでに)ゴブリンの巣を『調査』した、あの森だ。


「はぁ…はぁ…! ぜえ…!」

「にゃー! まだ、まだだにゃ!」

「ひっ…! あ、あっちからも、来ますウサ!」


「「「ぎゃああああ!」」」


森の中を、三人の(ピカピカの装備に身を包んだ)美少女の悲鳴がこだましていた。

それを、俺は、少し離れた木の枝に腰掛け、インベントリから取り出した『干し肉』を齧りながら、ぼんやりと眺めていた。


(……うん。ダメだ。話にならん)


俺の(4周目の)目から見て、彼女たちの戦闘力は、5点。

いや、装備(俺が選んだ)の性能で下駄を履かせているから、辛うじて10点か。


クロエは、持ち前のスピードで単独で突っ込みすぎている。

ララは、ミミを守ろうとして、動きが硬くなりすぎている。

ミミは、ララが攻撃されるたびに、悲鳴を上げて、詠唱が(3回に1回)失敗している。


(はぁ…。スローライフが遠い)


俺は、干し肉を飲み込むと、木の枝からひらりと音もなく飛び降りた。


「はい、ストップ。全員集合」


「「「は、はい!(にゃ!)(ウサ!)」」」


泥だらけの三人が、俺の前に(なぜか)直立不動で整列する。


「……まず、クロエ」

「お、おう! 師匠!」


「お前は、自分が『斥候』であり『盗賊』だということを、戦闘が始まると綺麗サッパリ忘れるな」 「うぐっ…」

「お前の仕事は、真正面から殴り合うことじゃない。敵のヘイト(敵意)をララ(前衛)から逸らし、隙を作り、急所を刺して、離脱する。ヒットアンドアウェイだ」


「わ、分かってるぜ! でも、つい熱くなって…」

「その『つい』で死ぬんだよ、お前みたいなタイプは」


俺は、クロエの才能スピードは認めつつも、その致命的な欠点(脳筋)を、冷静に指摘する。


「(……まあ、言うは易し、か)」


俺は、森の奥にいるゴブリンの群れを【索敵】スキルで探知する。


「よし。クロエ、今から、あのゴブリンに『気づかれずに』、俺の言う通りの場所を、そのミスリル短剣で刺してこい」


「え? 気づかれずにって…あそこ、開けてるぜ?」

「いいから行け。気配の消し方が甘い。足音、呼吸、魔力の流れ、全部ダダ漏れだ」


「(うぐぐ……!)」


クロエは、悔しそうにしながらも、俺の言う通りに、気配を殺して茂みを進む。


(ダメだ。葉っぱが揺れすぎてる。風の流れと同期してない)


俺は、小石を拾い、クロエの5メートル先の木の幹に、音もなく当てる。

カツン。


「(!?)」 ゴブリンが、音のした方(クロエとは逆)を向いた。


「(……今だ!)」


俺は、クロエにだけ聞こえるように、小声で(もちろん風に乗せて)指示を飛ばす。


「そこだ! 懐に入れ! 狙うは、首筋の、三番目の『うろこ』!」


「(三番目!? そんな細かいの、分かるか!)」


クロエは、混乱しながらも、俺の指示を信じて(ヤケクソで)懐に飛び込み、ミスリル短剣を突き立てる!


「ギ……!?」


ゴブリンは、声も上げられず、その場に崩れ落ちた。

そこは、的確に、脊髄せきずいを断つ、急所きゅうしょだった。


「ひ……」


クロエは、自分の手で(あっけなく)魔物を仕留めたことに、顔を引きつらせている。


「……なんで、あんな場所が『急所』だって、分かったんだよ…」


「【万物鑑定ゴッド・アイ】。と言いたいところだが、まあ、3回くらい解剖すれば、誰でも分かる」 「((((こわっ!?))))」


俺のサラリとした(4周目基準の)言葉に、三人の顔が青ざめた。


「次、ララ」

「は、はいにゃ!」


ララが、今度は自分が何を言われるのかと、虎耳をピンと立てて緊張している。


「お前は、ミミを守ろうとする意識が強すぎて、動きが全部『受け身』になってる。お前は『格闘家』だ。前に出て、敵の攻撃を『受ける』んじゃなく『受ける前に叩き潰す』んだよ」


「だ、だって! お姉ちゃんが危ないにゃ!」

「ミミの前には、お前がいる。ミミの後ろには、俺がいる。心配するな。……それより、問題は、お前の『パンチ』だ」


「パンチ?」

「ああ。ひたすら組手スパーリングだ。俺に、一発でも当ててみろ。本気で来い」


「(え?)」 クロエとミミが、息を呑む。 あの、何をしても無傷の(ように見える)ユートに、本気で?


「よ、よし! 言ったな! 絶対、泣かすにゃ!」


ララは、むしろ燃えたらしい。

『虎斑の道着』に身を包んだ小さな虎が、牙を剥いた。


「(スキル【獣化ビースト・モード】!)」


ララの身体能力が、一時的に跳ね上がる。


「いくぞ! にゃああああ!」


ヒュン! 「(お、速い。素質は本物だ)」


ララの拳が、俺の顔面スレスレを通り過ぎる。

俺は、もちろん、一歩も動かず、首をかしげるだけで、それを避けた。


「なっ!?」


「おらおらおらー!」


ララが、目にも止まらぬ速さで、拳と蹴りのラッシュを仕掛けてくる。

だが。


(遅い。軌道が単調すぎる)


俺は、その全ての攻撃を、最小限の動き――半歩下がる、体を捻る、屈む、逸らす――だけで、紙一重でかわし続ける。

まるで、ララが、俺の周りで必死に踊っているようにしか見えない。


「はぁ…! はぁ…! な、なんで、当たらないにゃ!」


息を切らしたララが、悔しそうに俺を睨む。


俺は、やれやれと首を振った。


「ララ。お前の今のパンチは、威力が分散してる」

「分散?」

「ああ。殴る瞬間に、手首がぶれてる。それと、もっと腰を入れろ!」


俺は、手本を見せるように、軽く、シャドウのフックを(もちろん、風圧だけで)空を切る。


「拳は、こう。腰の回転を、腕に、寸分のロスもなく伝える。お前は、腕だけで殴ってるから、見た目ほど威力が無い」


「こ、腰……? こうか、にゃ?」


ララが、ぎこちなく腰を回す。


「違う。そうじゃない。……はぁ。クロエ、ちょっと失礼」

「へ? ぎゃっ!?」


俺は、近くにいたクロエの腰を、無遠慮に(あくまで見本として)掴む。


「い、いきなり何すんだ、このエロ師匠!」

「いいから見ろ、ララ。体重移動は、こうだ」


俺は、クロエの体を(人形のように)無理やり捻らせ、格闘家の「正しい腰の入れ方」を実演してみせる。


「(な、なんか、腰が、熱い…!?)」


クロエが、顔を真っ赤にして固まっているが、知ったことではない。


「……な、なるほどにゃ! こうか!」


ララは、それを見て、何かを掴んだらしい。

日を追うごとに、彼女の拳は、重く、鋭く、洗練されていった。


「……最後、ミミ」


「は、はいぃぃぃっ!」


ララのスパルタ(?)指導を見ていたミミは、もはや生贄いけにえの兎のように、プルプルと震えていた。

その兎耳も、完全に伏せられている。


「……ミミ。お前には、一番、大事な仕事を任せる」


「(ひっ…! だいじな、おしごと…?)」


「ああ。『精神的な強さ』だ」 俺は、冷徹に、告げる。 「お前は、臆病すぎる。ララが怪我をするたびに、お前はパニックを起こして、詠唱に失敗する。……はっきり言うが、今のままのお前は、パーティーのお荷物だ」


「……っ!」


ミミの大きな瞳から、みるみるうちに涙が溢れ出した。


「う、うう……。ご、ごめんなさい、ウサ……!」


「ミミ! 泣くな! ユート、言い方ってモンがあるだろ!」

「お兄ちゃん! お姉ちゃんを泣かすな!」


クロエとララが、慌てて俺に抗議する。


俺は、二人を手で制した。


「甘やかすな。これは、実戦だ。ミミがパニックを起こせば、ララが死ぬ。ララが死ねば、クロエが死ぬ。……そして、俺が(面倒くさいことになる)、死ぬ」 「(……え?)」


「ミミ。お前は、このパーティーの『生命線』だ。お前がコケたら、全員コケる。……分かったら、涙を拭け」


「う……うっ……はい……(びえええ)」


(ダメだこりゃ。泣き止まない)


俺は、ため息をつき、森の奥を【索敵】する。


(……いた。ちょうどいいのがいる)


隻眼せきがんのウルフリーダー』


Eランク冒険者が、パーティーで挑んで、ギリギリの相手だ。


「……よし。ミミ、よく見とけ」


俺は、ララとクロエに目配せする。


「二人とも、あのウルフリーダーを足止めしろ。ただし、本気で殺すな。『いい感じ』に、ララが負傷しろ」


「「はぁ!?」」

「何言ってんだお前!?」


「いいからやれ。……もちろん、安全は俺が(絶対に)確保している」


俺の、有無を言わさぬ(4周目の)圧に、二人は「(う……分かったよ!)」と、ヤケクソでウルフリーダーに突っ込んでいった。


「ガルルルルアアア!」


ウルフリーダーが、手負いの(フリをした)クロエを無視し、本命のララに襲い掛かる!

ララは、俺の指示通り、わざと大振りの攻撃を受け止めるフリをし、腕に浅く爪を立てさせた。


「にゃあああっ! い、痛い! 痛いのにゃ!」


ララが、大げさに(だが、本気で痛そうに)叫び、腕から血を流す。

もちろん、俺は、あの爪がララの動脈や神経を傷つけないよう、見えない魔力障壁シールドで、威力を9割殺していたが。


その、生々しい「血」を見た瞬間。

ミミの頭が、真っ白になった。


「あ……あ……あああああ……!」

「ララちゃんが! ララちゃんが、血を! いやああああ!」


「ミミ!」


俺の、怒声に近い叱咤しったが飛ぶ!


「パニックになるな! 落ち着け! お前が今、泣いてどうする!」


「だ、だって! 怖い! 怖いウサ!」


「ララを見ろ! お前のたった一人の姉妹かぞくだろ! お前が姉を守るんだ!」


「(!)」 俺のその言葉に、ミミの兎耳が、ビクンッ!と跳ね上がった。


(……わたしが、ララちゃんを、まもる…?)


「ガルアアア!」


ウルフが、血の匂いに興奮し、ララに(防御済みの)追撃を仕掛けようとする。


「ミミ!」


「――【聖域のホーリー・バリア】!!」


ミミは、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらも、その手に持った『世界樹の杖』を、ララに向かって突き出していた。

杖が輝き、ララとウルフの間に、淡い光の壁が出現する!


「(お、やった。成功だ)」


「(……す、すごい…! お姉ちゃん!)」


ララが、自分の前に展開された、温かい光の壁に驚く。


「はぁ…はぁ…。まだ、ですウサ…!」


ミミは、涙ながらも、詠唱を続ける。


「ララちゃんの、傷を…! 【大地の癒し(ヒール・オール)】!」


杖から放たれた優しい光が、ララの腕の傷を、完璧に塞いでいく。

それは、彼女が、涙と恐怖の向こう側で、初めて、自分の意志で成功させた、完璧な回復魔法だった。


「……やった……。やった、ウサ…!」


ミミは、その場にへたり込み、今度は、安堵あんどの涙を流した。


(やれやれ。これで、なんとか、形にはなったか)


俺は、役目を終えたウルフリーダーを(インベントリの干し肉で)手懐け、森の奥へ帰らせながら、深く、ため息をついた。


「連携して、格上の魔物を倒すパーティー戦術も訓練」 俺は、日々の訓練の総仕上げとして、三人に、格上の魔物オークジェネラルと対峙させていた。


「よし、訓練の成果を見せろ!」


俺は、もう木の枝の上で、指示コマンドを出すだけだ。


「クロエ、影からヤツの右翼みぎの『目』を潰せ!」

「ラジャー! (あの鬼畜な精密射撃訓練の成果だ!)」


「ララ、ヤツが体勢を崩した瞬間にふところへ! 狙うは、あの腰の『ベルト』だ!」

「(あの地獄の組手の成果だにゃ! 腰を入れる!)」


「ミミ、聖女ヒーラーは死ぬな! ララの突撃に合わせて、全員に『シールド』を張れ!」

「は、はい! (ララちゃんは、わたくしが守る!)」


俺の完璧な指揮(ゲームのRTA走者並み)のもと、三人は、最初はボロボロになりながらも、確実に、連携を覚えていった。

クロエが撹乱し、ララが打ち込み、ミミが守る。


彼女たちは、俺の(3周分の)カンストした経験値をスポンジのように吸収し、驚異的なスピードで成長していく。


(……ふぅ。これで、なんとか、Eランクの依頼なら、のサポート無しでも、死なないレベルにはなったか)


俺が、泥だらけで(しかし、達成感に満ちた顔で)ハイタッチしている三人娘を眺めながら、ようやく「今日の晩御飯」の献立に思考を移し始めた、そんな、ある日の午後だった。

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