【#01】星明かりの魔法使いのてんまっき
星に願いを――
昔から よく そう言うけどさ!
もしも 星のほうが
まじめに 願いを
かけちゃってたら
どうなんと思う?
こう なんだよ!
3,2,1!
もういいかい? はじまるぞ!
【あぼんしかけた俺は、
目覚めたら“ようじょ”にドボンしてた】
⋯⋯――ぅうう。頭、痛ってぇ⋯⋯!
けど、ぎりぎりどうにかなったみたい。
軋みを上げるこめかみに、内側から叩き起こされた俺は、
痛む部分が他にはないことに、安堵しいしい身を起こしかけ、
って、え――!?
手のひらに感じた強烈な違和感に、目を見開いた。
途端、ぶり返してきた刺すような痛みに思わず顔を顰める。
いや、顰めたのは頭痛のせいだけじゃない。
おいおい、なんつうか、まるであいつの髪に触れた時みたいじゃなかったか、今!?
ギョッとしたあまり、引っ剥がす勢いで離してしまった右手と、起き上がりかけの体を支えている左手。
腰回りに軽く力を込めて、上半身をしっかりと支え直した俺は、自由になった両手でもって今度はこわごわと頭髪に指を這わせ、絡ませてみる。
おかしい。
俺の髪がこんなに柔らけーワケない。
大体、ここ、どこなんだよ?
見たトコ、和室みてーだけど。
会場にこんな部屋、あったっけかな⋯⋯?
それに⋯⋯あれ? そもそも俺、どうやってここに?
変だな。思い出せねえや。
いよいよ奇っ怪。
痛くない方の頭の隅で、端的に浮かべると、何かヒントが見つかりやしないかと、俺はぐるりと部屋の中を見回すことにした。
まず右手側。
床の間があり、鞘におさまったままの太刀と脇差が飾ってある。
奥側と手前には、手作り感あふれる掛け軸に、金彩の施された壺が赤白で一口ずつ。
その反対へと首を巡らせると、モノクロの写真が額縁に入れられ、長押に三人分飾られている。
写っているのは男二人に、女性が一名。
日本海軍の軍服に、袴姿に、留袖姿。服装からして戦前か戦中に撮影されたものだろうか?
二間続きの襖は開け放たれていて、その向こうに置かれた座卓の天板には、和室には似つかわしくないペット用のキャリーが二つ並んでいる。
サイズはどうみても、小型犬用。猫か犬でもいるっぽいな。
部屋の明かりは消えているが、まだ日が高い時間らしく、自然光だけで部屋の中は十分明るい。
だから照明は灯いていなくて――、って、
うん?
⋯⋯なんか天井高くないか?
俺が、座ってるせい?
それにしても、どこか違和感ある気がするけど。
ま。いいや。立てばわかる。
俺は、立ち上がりながら再び辺りを見渡した。
ふうむ、レセプション会場のホテルの和室にしちゃあ、生活感ありすぎ。一般家庭の二間続きの日本間ってところだな、こりゃ。
天井は――⋯⋯。
うん。やっぱ不自然に高い。
俺は思った。
三メートルじゃ効かなくね?
見たトコ、天井高以外は普通の日本間なのに、なんでこんな作りにしたんだろう。
これじゃあ照明入れるのだって不便じゃねーか。
実際、百七十五の背丈の俺でも、紐に手が届きそうにないしさ。
他に妙なところは――?
さらに確かめようと、窓ガラスの向こう、庭先へと目を向けた俺は、映り込んでいる姿に、思いがけず、
「ぅワきゃあッ!?」
叫んでいた。
そう。
俺の喉から出せるワケのない、それこそ小学生になるかならないかくらいの――
幼い女の子そのもの、な声で。