#3 実質ナンパ
ショッピングモールから出て二人は自宅を目指しながら歩いていた。
「急に喋りかけて悪かったな。改めて自己紹介するけど俺は同じ学校の…」
「知ってるよ、2組の天音ひかる君でしょ?」
自己紹介する前に名前へ言われた、まさか自分が美少女に認識されてることに少し驚きを覚えながらも会話を続けた。
「違うクラスで接点もないのに知ってたんだな俺のこと」
「知ってるも何も貴方こないだのテストも学年1位で体育の成績もトップクラスで女子からの人気もすごいじゃない。」
実際ひかるのスペックもかなりのものである。
料理ができて高校生離れした筋肉に学力も学年トップレベルで、多種多彩な知識を持ち合わせていて更には眉目秀麗である。
へーそうなんだと返答すれば、月はじとーっとした目でちょっぴり怪しげにひかるを見つめる。
「ってかさ、何で私に声かけたの?ナンパ?」
「いやなんでそうなるんだよ」
「どう見てもナンパでしょあれは」
ボケなのか真面目なのかいまいちわからない質問に軽く頬が緩みながら突っ込みを入れるのだが、実際あの状況は側から見たらナンパにしか見えないのだがひかるは否定をする。
「無駄に金突っ込んでるのが見てられなくて声かけただけ。俺ああいうの得意だし、可愛いもんなアザラチ君。」
「アザラチ君知ってるの!?」
(アザラチ君、アザラシをモチーフにした人気ゲームでアニメ化もされてるキャラクターの一つで、ひかるが月にとってあげたぬいぐるみ)
急に目を輝かせて興奮気味に見つめてくる月にひかるはびっくりするのであった。
何故ならひかるの中の月の印象は誰にでも分け隔てなく接していて今時の女子高生で、ゲームやアニメに全く興味がなさそうな印象だっただけにこんな一面もあるんだなと。そしてそのギャップに少し可愛いと思った。
「ま…まぁ人気アニメだしな、先週の話しなんてさ」
アニメ話しで会話に夢中になってた二人はあっという間にマンション前へ着いた。
「まさか天音君とアニメ話しで盛り上がる何て昨日の私に言っても信じてくれないだろうなぁ」
学校内で同じ趣味を共有できる人がいないのかはわからないが、月の表情は満足そうに見える。
「それは俺の台詞」
「でも学校ではあまり喋らない方がいいかもね」
「ま、まぁそうだな」
「その代わり連絡先交換しよ?QRでいい?またアニメの話ししたいし」
自分と関わってるのを周りに知られるのは嫌なもんなのかと少ししょげていた所に、連絡先交換を求められいいよと素っ気ない答え方をするが内心はちょっぴり嬉しい、ひかるの心の中はまるでジェットコースターだった。
また話そうねと笑顔で手を振って3階までエレベーターへと向かう月を見送った。
対照的にひかるは動揺したのか分からないが一緒に乗ればよかったものの、わざわざ5階まで階段を使って自宅へと向かうのであった。