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最終話秘密結社堕天使~結成秘話②~

「ちっと待ってくれよ!あんた達姉妹…二人のしてるこたぁ被害者救済を謳えば聞こえはいいがやってるこたぁ立派に犯罪行為だ……その手助けを俺にやれと?」


 これは二人の姉妹間の問題事であり、他人の俺が口を挟むべきじゃない事なのも充分理解していたつもりだった。


 けれどこの時の俺には、どちらの言い分も行き着く先は犯罪行為としか思えず静観する事が出来なかったのだが、姉妹の反応はバラバラだった。


「なによあんた…今頃気づいた訳ぇ?あんたとあたしたちはもう一蓮托生なの……今さら逃げようったってそうはいかないからね!」


 俺の発言に苛立たしげにそう言ったのは、直子の義妹の舞原真奈美の方で、姉の直子の方はこの状況を俺にどう説明しようかと思案に暮れているようだった。


「……確かに貴方が言うように…あたし達姉妹のやってる事は明らかに犯罪行為よ……けどよく考えてみて…私利私欲に肥え太る警察官僚連中に鉄槌を下して何が悪いの?」


 姉、直子の方は義妹の真奈美程感情にこそ流されていないものの、その分、凍てつくような殺気を帯びた瞳で俺の瞳を見据えた。


 この時だったのかもしれない。


 俺の中の善人としての糸が切れたのは。それからの俺は、彼女達姉妹の感情の赴くままに、何十人、何百人という人の命を奪う一人の冷酷な殺し屋に成り下がっていた。


 それから二年程後だったと記憶している。


 葛城恵梨香さん、美奈子さん姉妹が、組織に加入してきたのは。


 そして、葛城姉妹加入から、一ヶ月程したころ、徐々にではあるが彼女なりに、わずかでも残っていた良心の呵責があったのだろう。


 組織を本当の意味での被害者救済組織の方向へと向け始めていた。


 しかしまた、一方では、義妹である真奈美との確執はさらなる深みにはまり、もはや殺人欲に魅せられ、殺人鬼と化した義妹、舞原真奈美の凶行と暴走は止まらず、その時堕天使の処刑人から、姉、舞原直子の側近に昇格した俺に変わり次代の堕天使の処刑人を担っていた、葛城姉妹の姉、恵梨香さんが組織の在り方に大きく疑問を感じ始め、妹の美奈子さんを組織に残す形で組織を脱退したのである。


 恵梨香さんの脱退により、義妹の真奈美に大きく行動理念を狂わされた姉の直子は、組織に残った葛城姉妹の妹美奈子に義妹の真奈美の排除を要請するのだったが、それは全くの裏目に出てしまい、結果として、恵梨香さんの妹美奈子は舞原姉妹の義妹、舞原真奈美に返り討ちに遭い命を落としてしまったのである。


 けれどこれで、舞原姉妹の確執が消えた訳でも、義妹、真奈美の暴挙が止まった訳でも無く、逆に義妹、舞原真奈美の暴挙は日増しにエスカレートしていき、事もあろうか、自ら返り討ちに殺めた恵梨香さんの妹、美奈子さんになりすました彼女は、恵梨香さん捜索にと、先にその場を跡にした俺が、彼女と接触したのを見計らったように平然と俺達二人に、接触してくるのだった。


 あたしが彼と、初めて会話を交わしたのは、伊勢佐木町商店街の一角にオープンさせたあたしの店、ショットバー[帰って来た街角]だった。


 彼とは組織在籍中に何度か顔を合わす機会はあったものの、言葉を交わす事は一切無く、あたしは妹の美奈子を組織に残したまま、組織を脱退していたのだが、彼の出現でまた再び、血煙たなびく裏の世界へと逆戻りする事になった。


 最初は彼の出現だったり、彼の口から語られた組織の現状だったり、組織に残して来たあたしの唯一の肉親、葛城美奈子の最後だったりと、思わず耳を覆いたくなる事ばかりで、正直、全てを恨めしく思ったりもしたのだが、いつしか彼と寝食を共にするようになった頃から、彼に対するあたしの心情は徐々ににではあったのだが、変わり始めていた。


 彼は優しく、本来ならば争い事をあまり好まない青年であること。


 しかしそれとは裏腹に、顔色一つ変えず、人を殺せる冷酷非情な一面も持ち合わせた、少し変わった青年であることだった。


 そんな彼の意外性にあたしが気づいたのは、あたしの妹になりすまして、あたし達二人を監視していた、舞原姉妹の義妹、舞原真奈美が本性を現してあたし達に牙を剥いた時だった。


 彼女があたし達二人に対して、牙を剥く前夜。彼とあたしは、あたしの殺風景な単身者用のアパートの一室で、生まれたばかりの姿になり、ひっそりと結ばれた。


 更にこのとき、わかった事がもう一つ。


 あたしと彼は、いろいろ、様々な紆余曲折を経て、巡り会うべくして巡り逢った二人だということだった。


 そして、暴走の一途を辿る組織、徐々に見え隠れしはじめる事の真実。


 反逆の堕天使を名乗り、組織と県警に戦いを挑んだ結果、多くの犠牲を払って続けられていた県警内部にはびこる闇献金問題の黒幕が、あたしと彼の本当の雇い主でもある東京警察庁長官の舞原龍三郎氏だった事。


 けどその真実に辿り着いた時、あたし達二人の命運も一緒に尽きるのだった。


 やはりあたし達には、未来につながる光など無く、組織最強処刑人の名と共に、あたし達にあるのは、未来永劫の闇夜だけだった。

 Fin

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― 新着の感想 ―
[一言]  長きの連載ご苦労様でした。<(_ _*)>  こんなほの暗い雰囲気で終るなは凄く好みでした。  なにせ途中までノンストップで戦闘だったりしてたので、ラストの哀愁漂う終わり方は際立ちました。…
[一言] 報われなかったお二人の運命に心が痛みます(:_;)
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