第1章 俺達って何者?
「泣くなよ、アカネ。俺だって何度も怪物達に食われたさ、とても痛いって部分は、お前と全く同じだよ。だから、自分なりに闘い方と言うか、遊びのつもりで俺達は、その闘い方、やり方って言うのをこの1ヶ月で学んで来たんじゃんかよ、だろ?」
「うん・・あたいも少しは逃げるのも、反撃するのも上手になった気はするけどさ」
それを聞くと、やはり二人は闘う事すら十分に教わって来ては居ないようだ。父母がそれだけ教える時間が無かったと言う事だろうか、敢えて教えなかったのか、いずれかだ。
「それを知るべきは、自分で体験するしか無いんだよって、じいちゃんが伝えたかったのは、そんな遺書だったらしいぜ?これって・・でも、どんなんだよなあ」
「ああ・・それってね、『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』って古―――い言葉らしいわ」
「何なん?それ・・」
「さあ・・」
シンタは、アカネに向き直る。二人はこうして喋っているようで、互いに敵が襲って来ないかどうか、背向いに座っていたのだ。彼等は、もうかなりの場慣れと言うか体験によって、それを成長だと言うのか、そう言う戦略的な事も覚えて来ているようだ。体も精神年齢も幼いと評しているが、僅かの時間でここまで理解できると言うのは、恐らく、その祖父シン、祖母アマンの天才的血筋故のものと見るが・・
シンタは少し考えながら、空を見上げた。それは空からも怪物が襲って来る事があるからだ。翼の生えた怪物達も結構いる。その空は、目まぐるしく色を変化し続けている。その瞬間に赤く染まった雲や、黒い雲が川のように一定方向に流れて行く様子も眺めながら、注意は怠らなかった。色とりどりと言えばおかしな形容であるが、上空には常に強風が吹き、彼等の『感車』が、その為に上空には飛び上がれない事もあるが、青い空なんて殆ど見た事も無い。その空を見上げながら、思い出すように、シンタはアカネに言う。
「でもさ、今、その話でさ、ちょっとだけ思い出したんだけどさ、俺達は、ばあちゃんの顔も知らないけど、シンじいちゃんが一回教えてくれた事があって、その時に確か・・そんな事をパパッチに言っていた言葉らしいんだけど、それはね、我が子には、実体験が必要だから何事もまずは、経験しなさいってね・・て言う意味らしいんだよな、俺も、そんな言葉をちらっと今思い出したぜ」
「でもさ、それがこれ?この現状なん?なんかさ、じいちゃんもばあばも、とても優秀で、過去の地球を救った英雄のように言われていたそうだけどさ、何かとても大雑把な遺言だよね、あたい達って、少なくともパパッチにはある程度の教育?って言うのを受けたけど、余り自分達と同じ人種?そうあたい達の姿態をそう言うらしいけど、そう言う種は全く見た事が無いもんね、じいちゃん、パパッチ、ママリンしかこんな姿をしている人種って言うのを知らないから」
「ああ・・他にも居る筈だとは言ってはいたけど、俺も見た事は無いよ、その言ってるパパッチも今まで見た事は無いんだってよ。何だよ、その情報はってと思うわな、普通は。それに、俺達が居たのは、ずっとずっと地中の穴の中じゃん?そんな地上の世界の事なんて分かる筈も無いしよ」
ここで、やっと二人がどんな環境に居たかも分かって来た。