新章 宇宙特進路と、改造宇宙船
孔明元老がこう語っている。彼が最も活動的であった青年時代の誰が見ても美青年である。
「ふふ・・私が沢山の書物を読み、空を眺め、四季を知り、出来るだけの戦略をも知識として戦って来た時代すらも、その限られた命の中でもがきました。本当に大志はあれどその生涯は短いものでした。沢木元老も、自分の理想とする未来を描かれていたでしょうが、道半ばで没してしまわれた。その我々が、その時代のずっと先の今ここに存在している不思議な事も、今色んな情報から、今の知識で言えば本来の肉体は滅びようともその魂は生きていると言う事になるのですね」
「そうですね、思う事は尽きませんでした。そのどれもがやり遂げられ無かった忸怩たる思いはありました」
「同じ思いを感じております」
孔明元老は深く頷いた。沢木元老は、
「ええ・・その昔書物でしか知り得なかった中国の三国志時代の天才軍師と今ここで話をしている自分もまた、その時代のどこかで生きていて肉体を持っていたのだと想像すれば、その時代には自分には時代に這い出る存在では無く、またその土壌によって表舞台で活躍をする事も無かった。恐らく自分の意志を殺して目立たなく生きていた事でしょう。記憶を辿って見ると、ある貧しい県の片隅で細々と生きていたと思われます」
「その私もまた、没した後に何度か肉体を持っておりますが、かの君のような者に見い出される事も無く平凡な日々を送っていたようです。このように、人生と言うものは、環境や人との出会いによってどんな方向性にも分かれると言う事なんですよね。」
「だが・・その知識は、消える事無くその時代に生きた、自分達が成し得なかった事をどこかで輝かせた時があった。それが孔明であり、又沢木 純であったと言う事でしょう」
「はい・・まさしくそうなんでしょうね」
孔明と沢木は空を見上げた。もう彼らを襲って来る怪物達は居なかった。やっと束の間かも知れない平穏を取り戻した彼らには、美しく広がる満天の空に浮かぶ星々を見るのであった。
「ところで、書物にある貴方が天を指さし、あれが自分の星であると言う事は本当の事だったのですか?」
「あ・・ふふふ。それは、後世の文筆家の創作でしょう。沢木元老にお聞きします。貴方はご自分の星が分かっていましたか?」




