忘却の過去に
「やったね!これは願っても無い毒霧の成分分析が出来るし、この異世体の丸毎サンプルが手に入った訳だ。地球型人間生体とは確かに違うが、嘗ての怪物達とも姿は異だ。組成が違うとしか言えないよね」
見ていたリンゼだが、
「僕は、ユカリの能力の方が気になりますよ」
苦笑するサネアツは、勿論冗談だが、
「まさか、ユカリ軍士を解剖したいなんて言わないだろうね?そうか、君は年代的に言えばほぼ同年代。旧時代の15歳に相当するものね」
それを優が少し咎めた。
「サネアツ、冗談でも同じ人間生体を解剖なんて言う言葉は良く無い」
「あ・・失敬。俺は、このバクムのサンプル入手で少し舞い上がっていたよ。ああ・リンゼ君、丁度ユカリ軍士が来ている。今回の手柄で、軍団補佐に昇格するようだ。話をして来たら?」
どうやら、サネアツは男女の感情の方にその興味があると思ったようだ。苦笑する優は、その場を退き、やはり褒章の場に顔を出す事にする。こう言った事は非常に大事なものなのだ。人は褒めてやる事。モチベーションはそれで高まる。SKIの教えだった。
ララが、自分の一族からまた偉材が出たと喜んでいた。そのユカリは能力をどうやら複数持っているようで、この世代には恐らく新たな人型としての可能性が高まって来ているのでは無いかと優は思った。リンゼとユカリは、その後夫婦になる事となる。そして、とんでもなく子孫に偉材が創出される事をこの時点で分かる筈も無かった。
こうして、実証を積み上げる事は、新時代の人類への未来に向かいつつある彼らのこうした一歩一歩なのである。目的は何だ?何故彼らは来る?そして生体を拉致する?
こうした答えに、今後はこちらもとうとう捕獲したのだ。確かに死んだ個体だが、生け捕りを求める方がそもそもおかしいのである。
また、ほんの少しに過ぎないが、雄太から一部の情報開示があった。この場合確定に近い事しか披露しない事は互いの暗黙の了解になっているし、高速演算処理が出来るSKIも別記憶媒体を作り、不確定的な事はそこに収めている。電脳が創作話や架空の事を語る事は絶対に無いからだ。




