逆説の論理
虚々実々の駆け引きと言うのは、戦術なのである。そして、双方には到底通常の人間では判断出来ない瞬間的な判断も出来る。しかし、AIに感情は無用と切り捨てたSIと、人間的な個人感情も取り入れた人格が必要であると、トップ11が取り組んだ旧SKI=現SKとは、こう言う部分でも違っているのだ。そして、もはやSIには、その部分が入る余地はなく、ワクイ同様に切り捨てられているのだ。戦術において、それが重要であるのかどうかは分からない。ここへ来て、もはやどちらが有能、優秀かと言う問いは必要も無い。戦争とは単純にこう言い切れる。先に言ったように、勝つか負けるかしかないのであるから。和議等は単なる停戦と言う名の先延ばしでしかないのだ。新にまたそこからリーダーが変われば、戦争が始まる。つまり、普遍のリーダーが必要なのだ、人類と言う生体においては。その事をずっと言い続けて来たが、そう言う結論をトップ11はとっくに分かっているのである。
「動き始めました」
SKに、報告はむしろ要らなかった。もう寸刻を問わずどんどんと情報が入って来ているからだ。
「じゃあ、潜伏メンバーが、工作を終えているので、SI赤壁軍の新戦車隊には、どの軍を向かわせましょうか?」
「シンゾウ司令官、君が向かってくれ」
「は!」
シンゾウが50名のM軍とキラ副長を連れて、ここには特級レベルの怪物が棲息するバラン地区と言う場所に向かった。この特級レベルの怪物とは、ガムンバ、ベタルシ、セムバーと言う、もう特級でもA~Cランクのトップ3と言っても良い位の推定50M程ある怪物達だ。体が大きいだけでは無い。走力もあり、通常の弾丸などは簡単に弾くし、以前のデマルクでも容易に倒せるレベルでは無かった。当然皮膚などは鋼鉄並みに硬く、分厚い上に、ガムンバはその剛毛というべきか、体中の針を向かって来る相手に飛ばすのだ。それこそミサイル並みにである。そしてベタルシは、戦闘態勢に入ると体を丸めで巨大な鋼鉄のボールと化す。もはや、どんな攻撃にも耐えられるし、敵は居なかった。殆どの怪物は圧力で吹き飛ばされたり、踏みつぶされるのである。またセムバーは、想像上の怪物である麒麟を連想させる風体であり、両腕が異常に長く、その腕先が刃物のように尖っており、その剛力で振り回すと、相手をばらばらに刻んでしまうのだ。
そんな危ないバラン地区にシンゾウ司令官が向かった理由もあるし、むしろ、SIが敢えてこの地に何故向かって進軍して来たのかと言う事も判明してくるのだ。




