現れた存在その1
元帥の指示には、何重にも安全策が仕組まれていた。
こうして、シンゾウ、ララは現在最も開発が進んでいた『ゼロ式飛竜1号機』に乗り込むのだった。操縦も非常に簡素であり、流石にマニアのランが手を入れただけの事はあった。シンゾウをそれは乗った瞬間に安堵させたのである。
「はは・・これって、相当の部分でワクイの使用していた飛機を参照しているじゃないか」
「シンゾウひい爺ちゃん、あたいには分かるよ、この操縦法」
「え・・ララ、お前は孫スバルの子だが、父親不在で生まれた我々の中では特異な存在だ。ケンゾウ、アカネの血筋は、全員が俺達とは少し違う遺伝子形態を持っているようだが。そうか・・ひょっとしてお前は、アカネの分裂体なのかもな」
「シンゾウひい爺ちゃん・・又、分からない事を言う」
ララが、困惑していた。時折シンゾウはこのようにシンの長男らしく、突飛な発想をする。確かにララは、父親不在で生まれている。もしかしたら、人類の将来には単性だけで増殖出来る可能性もあるのでは無いかと、アマンも研究に乗り出していた。元帥は、それを人類の将来の可能性を示唆しているのでは無いかと言っている。
しかし、そう言う事もシン兵団は、もはや旧地球人類とは違うと思うと元帥からも聞いていた。そこには、恐らく人類がこの先地球に反映する為の条件や、様々な未来が待ち受けているのだろうと、シンは言った。しかし、未来よりは、今なのだと強くシンは今までもそうだが、言い続けているのだった。
その中で、今度は又アマンがランと共に元帥に呼ばれたのだった。現地には、もうシンとシンゾウで調査については大丈夫だろうと言う何となく安心感があったようだ。シンもシンゾウも、最もこの兵団の中で、信頼できる司令官、副司令官である。なのでこれ以上適任の者は居ないと元帥は全幅の信頼を持っているのである。
「緊急の時に申し訳ないね」
元帥は静かな口調で言った。アマンは現在、元帥直属の秘書的な役割も担っているのであった。シン同様に、シン兵団の始祖でもあり、最も信頼感も高い。一方ランも、武器オタクであって、特に元帥とは過去の第二次世界大戦の総括話で盛り上がる事も多い。何故なら、元帥こそはその時代の*祖先の一人であるからだ。
*ここに深い意味がある。
「このタイミングで、済まないね。ラン君も一緒に少し伝えたい事があってね」
元帥の顔は、何時もの余裕があって穏やかなものでは無かった。重要な話題なのか・・と、アマンもそうだが、ランは強く感じた。




