現れた存在その1
「南極地下においては、4000メートルの厚さの氷があります。この地は恐らく渓谷においての深い谷、或いは盆地のような場所です。すでにこの旧南極では気候が全く変わり温暖な地表には植生も豊かで、怪物達も集結しております。しかし、この異変が起きる前から、周辺から全て姿を消しています。微弱な地震が起きていた為と、ある臭気が蔓延し始めた為と思われます」
「臭気・・それは・・怪物達にとって有害なの?」
「検証出来ておりません。しかし、怪物が消えた事と関連するとは思えます」
やはり具体的では無い。しかし、今シン達が一応の安全圏まで後退した事は分かった。
元帥が言う。
「シン君、帰還命令は出した。しかし、司令官たる君の意見を聞こうか」
「正直、元帥・・得体の知れないものに対する違和感や、危機感はありますが、それに対して、俺達は何時も守勢でした。ずっとその形で防御こそ自分達のスタイルだとやって来たんです。つまり、負けない戦いの選択でした。元帥のお考えを先に聞きたいのですが」
シンが逆に聞くのであった。
「いや・・今の所、シン君が危険水域まで後退してくれた事を持って、一安心という所だ。私にも未知の巨大エネルギーであり、全くのデータも存在しない。故にこれに向かう手立てがない状態では、どんな指示も出せないのだよ」
「感車を使用したいと言ったら?」
「危険な事の挑戦にGOは出せないよ、シン君」
「いえ、感車であれば光速移動できます。地球を1秒で7回半回れるので、10分も回れば、4500の画像が撮れますよ。それも危険と言うのですか?」
「いや・・ならば、シン君にそれをやって貰うしか無い・・だが、そんな画像なんて撮れないじゃないか、事実上」
ランが溜息をついた。
「ふう・・おい、シン・・お前は直観でものを言うよな、そんな事出来るわきゃねえぞ?」




