現れた存在その1
「じゃあ、ワクイが時限的装置を仕掛けていたとか・」
「それは、無かった。少なくても吸収したワクイAIには、その核だけは否定し、これだけは拒絶反応を示していたのだよ。ただしだ・・私がワクイAIを完全ダウンロード出来ているのかと問われれば、それは無いかも知れないがね」
「むう・・」
シンゾウを含め、全員が黙った。その時シンから画像通信が送られて来たのであった。
「今、猛烈な熱波を観測しつつ、高速で深海の海溝を移動中。周囲のバルー達も同じく熱源検知地点より離れつつある。今回副官であるキラ君より伝達事項があるので、伝える」
「おう・・」
少し全員がほっとしたものの、シンの声には緊迫感が漂っていた。
「私より、当地分析の途中報告を致します。本来こう言うイレギュラーな観測にて報告出来る状況では無いと存じますが、一応、もし暴発したと仮定しても、比較的安全であろう深海底を現在移動中であり、ドイツ製のバリアも搭載しております。又、瞬間移動手段として左舷に設置してある感車にて脱出する事も出来るようにしております。その上で申し上げます。この熱源エネルギーは、火山で言うウルトラプラニーレベルであり、想定半径100キロ圏内に影響を及ぼします。しかし、火山であれば噴火口より垂直に上昇すべきものですが、このエネルギーは周辺の分厚い氷を溶かしながら、地上に向かってどんどん周辺を大きな地底湖に変えながら上昇しています。つまり、自然的要因では恐らくこう言う現象は起こらないと存じます。しかしながら、断定出来る資料も、参照出来る過去のデータも御座いません。人類有史以来の初めて起こる現象でしょうから」
「何だと・・そんな事が・」
シンゾウが唸った。アマンもワカナも首を傾げている。
「一体何が・・」
キラは続けて言う。




