者々共出会え!海編
「一瞬にして消去した・・これが、永遠に続くと思われたワクイ軍団との無数の戦いで学べたものなどありませんでした。ただ、彼らが違うのは、我々に対する攻撃心、怒りなどでした。なので、これが終わった瞬間に思ったのは、無性の虚無感でした」
「うん・・それが大事な感覚だったのだよ。それが人たるものの感覚なのだよ」
元帥は静かな口調で言った。ずっと、この金属体が、ワクイのような危険思想で凝り固まった旧軍国時代の産物であるかと、アマンが思っていて警戒していた事にも触れていた。
「私はその事を知っていたんだよ、アマン君。そして君の警戒する事も自然なものだ。何故なら、死を恐れない者等本来居ないんだよ。こんな時代だから言うが、本来動物・植物であろうと生まれて死ぬ・・これが普通の事なんだ。だから、人の欲望と言うものに、これを独占したい、自分が君臨したい、他の者を排除したいと言う事の為には、とめどもないその欲望の先には、嘗ての権力者が常に求めて来たのが、この自分の至福、征服感が延々と続くようにと言う目的の為だった。それが不老不死であるのだ。だが、例えばその頂点に立ち、達成した後には、自分以外には信じる事の出来ない裸の王様しか残らないだろう。そして、そこから先に言った向上する、文化や芸術等は生まれない。美醜ばかりの事を言う訳では無いが、本来そう言う感覚とは生きるには、強い子孫を残したい、伴侶を選びたいと言う生死への輪廻があるからなのだ、それが無い未来には、消滅、絶滅しか無い事になるんだよ。君は、その感覚があるからこそ、自分の研究心を保って来られたのだし、恐怖を持たない、不安を持たない者で君があったなら、私は、自分の意志で、この『龍の巣』を自爆・破壊していただろう。実はね、そう言う仕掛けも残っているんだよ、ここには。そして、極論になるが、生あるものを食し、そこから自身が活動出来るエネルギーを体に摂り入れる、子孫を残す。その上で人に限らず、その食を得る為にはテリトリーを持ち、効率よくそれを摂取出来るエリアが必要となる。即ち人類の戦いと言うのは動物本来の縄張り争いに他ならない。幾ら知能が発達しようともその根本原理は変わらないのだ。その世界に恒久的な平和が訪れるのだろうか?君に問う」
「いいえ・・無いと思いました。しかしながら、今のお話の中で気づいた事は、そんな世界ならもう要らないので、自死を選択する。つまり、自死等が選択出来るのは人間だけだと言う事です」




