大転換への兆し
なんと・敵かも知れないと思われていた金属球体は、アマンが未知の鉱物組成である事が成分分析機にて分かっていたが、その核となる部分は既に肉体としてでは無く、金属的組成に置き変わっている事。そして、肉体はその金属皮膜で包まれているようだ。シン達とは違い、又兵士達とも違うようだが、もっと古い時代のミイラにも発想が飛んでしまう。やはり特殊なこの空間は。もっと何かの必然で残され、山本五十六と言う元帥をこの時代に残した。これこそ、大いなる意図では無いかと思うのだった。
アマンは、待機していたメンバーにこう言った。
「山本元帥が、ここの守護人となります。その上で、シンがここの指揮を執る事も任されました。今、我々がやる事は、とうとうワクイが乾坤一擲の攻撃を仕掛けて来ていると言う事です。ワクイの羽はもう捥いだ、だけれど、相手は今もって未知数です。得体が知れません。こちらは、あらゆる情報の中で、今まで推理をし、分析もして来ました。ですが、我々には間違いも数多くあると思います。山本元帥は、その中でワクイと同じくAIと同様のデータ量、知識と共に、海軍大将としてのノウハウを含め、この『龍の巣』に超合金の潜水艦がある事を教えてくれました。旧型ではあるけれど、プラクテノザウルスの鱗で出来ていると聞いたのよ。まさしく、それこそが我々が感車では無い、攻撃手段も持つ兵器となります」
「兵器・・・」
今まで否定してきた言葉だった。しかし、相手が武器を駆使する以上、こちらも持たねばやられる。ワクイ軍団を排除したのは、つまり、どちらが先だったかと言う事だ。もう一つ、何故山本五十六と言う過去の人物が、ここで登場するのか。シンは、この言葉を引用した。『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』正に格言だと思った。この時代に、きっと彼のような指導者たるべき人物が必要であると、故に先祖は彼を生かして来たのでは無いかと。
シンも確かにリーダーシップが取れる者だ。今では、以前とはまた違った能力も備わっている。だが、この短期間において、実に元帥と呼ぶ彼の指導力は、シン兵団を一つにまとめていた。彼の言う事は、とても具体的だった。もっと言えば、『今やる事』『自らやる事』『相手を褒めて動かす』と言う実践法だった。
シンタは、元帥を『師匠』と呼び、格闘技を習っている。『命の水』に約1か月浸かった元帥は、とんでもない能力を持っていた。指揮力、指導力だけでは無い。勿論その頭脳は、ワクイと同じくAIなのだろう。凄い勢いで情報を吸収するや、本格的な格闘技を身につける事は、己と言う人間本来持つ精神的な弱さを自覚し、揺れ動く心を自制する心の強さを持つ事だとシン兵団に問いたのだ。
更に、驚愕な事実も判明する。兵士と思っていた16名は、工仕兵達であり、それぞれに作業を受け持つ者達だと言う事だ。




