第1章2節 自分達と同族か?
アカネは、無謀に見えるこの闘いなんてするべきでは無いし、ここは逃げるのがベストだと思っていた。しかし、シンタとはそもそもそのスタイルも違うし、男の子?と女の子?の違いもあるのだろう。シンタはそれを受け取ると、『感車』の外へ飛び出した。文字通り、いきなりそんな装具を身につけて、シンタが本当に大丈夫なのかとアカネは心配する間も、全く彼はおかまい無くだった。
「あ・・お兄い・・けど、結構何か様になってるう・・」
シンタの身体能力が優れている事は、アカネも十分過ぎる程知っているものの、この自分達と同型の人種?に加勢するとは思わなかった。否・・シンタが加勢しているとは思えない。だって、何の繋がりも縁も無く、敵であるかも分からぬ相手である。シンタは、どうやら、この空を飛べるって言う装具に対し、むしろ興味を持ったのかも知れない。そして、少し離れた場所で、コモリゴンがその男?に集中している間にも、自分で周囲を飛び回り、短時間であっても、かなりその飛行も上手になっているのだった。この人型同種らしい者も、同じ武具を持つ・・つまり何等か自分達とつながるものを感じざるを得ない。シンタは、この同じ武具を使う者を既に自分達の同型種と感じているのだろう。アカネもそう思い始めた。だって、それ以外に考えられないからだ・・実際に形状は違えど、ほぼ同じような機能を持つ空を飛べる武具のようだし・・。それが、両親から人型が他にも居るんだと言う話の証明でもあるからだ。
もうそのシンタは、すぐに一頭のコモリゴンと対したのである。コモリゴンは、躊躇無く、シンタに向かって来た。A地区のバクダンを倒し、シンタが恐らくレベルアップしているだろうに、それはお構いなくだ。と、言う事は恐らくバクダンより上級クラスの化け物だと言う事になる。
ヒュン・・ヒュヒューーン・・これは、コモリゴンの風切り音だ。
「すげえな・・思ったより断然早いわ。これは、やっぱり強敵だわ」
と、言いながら、そこまで遠巻きに飛行練習を兼ねて観察する中で、シンタは簡単には倒せない事を、再認識しながらも、案外コモリゴンには攻撃力が無い事も感じ始めていた。攻撃力はその尖った嘴と、鉤爪を持った両足だけだ。それにやられないように、スピードのある敵に対し、もうずっと使って来たかのように身を躱したシンタだった。巧みに、この飛行翼なるものを駆使し、コモリゴンの弱点をシンタは観察するのだった。シンタは一度もコモリゴンには、ソードによる攻撃を仕掛けては居ない。又、5頭を一度に対する人型人種?らしき者も、確かにスピードは劣っているが、寸での所で身を躱しているようだった。また、右手には大きな長刀風の武具を手にしている。つまり、こいつは、何か自分達に繋がる人種へのヒントを持っていると思ったのだ。やはり、それがシンタの勘でもある。感覚と言い換えても良いだろう。
そのシンタはこれも感覚の成せるものだろう、いきなり声を掛けたのだ。




