空から・・
「え・・ええ。とりあえず、やって見ます」
アマンは、各個人を良く観察していた。これは、旧時代には顕著には表面に出て来なかった能力なのだ。超能力と言われていたその原理は、音波を使うリンドウもそうだが、電波を使うと言う事は、その光波を振動と同じ理屈であるから、これもその昔レーザー光線と言う物があったように、振動させる事によって、その分子の摩擦・揺れで光エネルギーを発進させるのだ。その強力な一方向の光線は対象物を貫通させ、破壊する。原理を応用すれば、これだけ強い電波を操れるワカナは、それが出来るのでは無いかと言うアマンの提案なのであった。
早速ワカナは、それを試し始めた。彼女は、実に様々なパルスの光源を一方向、対象の者だけに送る事が出来る能力を持っている。それは、シンゾウやシンタ、或いは受け手にも備わっている事を意味する。この物の無い時代、物質文明が消滅した現世において、こう言う突出した能力は、この先の運命を左右させる事が出来るのかも知れない。現にアカネは、知能が高いメバチックにそれを使い、リンドウも知能は低いが、幾つかの共通信号を超音波として、コモリゴンを今では空飛ぶ馬に見立てて、かなりの距離を移動している。これが大きな戦力になっているのだ。アマンの狙いは一体何なのか・・何で銃の話をしたのかは分からない。シンタ、リンドウ、ケンゾウは、この時全くランガーを無視するようになっていた。彼と戦って得るものなど何も無いのだ。それよりも急速にエリアは、その境界をデマルクによって破壊され、広い大陸のようになりつつある。確かに海はこの現世にもある。ただ、シンゾウに聞くと、海はまるで大きな川のようにうねっていて、急流となり、地殻変動によって、所々それらは寸断されて湖も出来ているのだと言う。つまり、昔あった大海原と言うものがこの現世には無いのだ。陸地が、むしろ地球全体の8割を占めている状態なのだと言う。地球は急激に乾き始めているのだが、全体量として水が減っている訳では無い。地球内部に占めるマントル内の鉄が、ほぼ中心部に沈み込み、地球の自転が緩くなってきている。その中で地下にその水分が沈んでいると言うのだ。冷え固まりつつある地球には、酸素が逃げ出し、宇宙線や有害な紫外線等を遮断する磁場であるバンアレン帯が弱くなる事によって、生物そのものがやはり消滅する未来が待っている。これは、避けられない事なのだ。しかし、ワクイはそれでもこの地球の大改造を目指している。今度は誰にも邪魔されずにだ。だが、彼の意に反して邪魔する者が現れている。排除の論理によって阻止するのは、何度も言うが当然の帰結なのである。




