第1章 進む
「ふふ・・美味いなあ、アカネ・・この果物は。もう場所は分かったから、今度はまず一番にここを食料確保地に決定だな。怪物共と闘うのは次回にするさ」
アカネは答えない。口に一杯果実を頬張って夢中で食べているからだ。口の周りはその果汁で一杯になっている。シンタは、周囲を眺める。差し当たっての敵はいないようだ。こう言う事を怠らないのは、やはりシンタが兄でもあり、今は両親に成り代わり妹を守っている証なのだろう。殺伐とした世界を感じるが、この一点だけを見ても、彼らは人間らしい一面を強く持っている事が分かる。つまり、ワクイとはどう違うのだろうか・・そこへたどりつける保証等全く無いが・・
ようやくアカネが全部を食べ切って、満足そうに、にこりとした。
「お兄い、美味しかったあ!これって超美味いよね!」
「ふ・・俺もそう思ったが、全部食ったのかよ・・はは・・おい、アカネ、顔を拭け」
シンタは、何か布地のような物を差し出した。これはママリンが植物の葉を使い、作ったものだそうだ。現代で言うタオルと何ら変わりが無い。地底湖で泳いだ後も、これで体を拭いたし、地底湖の水は非常に綺麗で、それを毎日飲んでいた。だから、地上に出て水分補給と言う事に困った時は、ミミッチに含まれる水分でそれを補って来たのだ。これも二人にとっては、地上における水分補給として十分にその代用になるものだろう。
その時二人は全く気づく事も無かったが、その様子を見ていた者が居たのだった。
何者かが、二人を監視しているのか・・?
「ふうん・・ここまで来るとはな・・」
それ以上は、もう途切れてしまったが、言語を使用する以上、地球人型生命体なのかもその監視する対象とは知れない・・ただ、何者かを知る由も無い現状だ。
それから、何度かこの木の実をアタックし、二人はこの山の頂上に恰好の晶洞があって、そこを食料保管庫とする事にした。だから、もうこの場所へ来られる事は覚えたし、恐らく数か月分の食糧・水は確保出来た形だ。
そして、少し気づいた事がある。二人の肌つやが非常に良くなっている点である。何か力も以前より漲っていた気がした。




