第三幕 その1 反撃する!
ケンゾウは、何故か落ち着いていた。ケンゾウもランガーと何度か戦ったが、何時もランガーの方が先に引くのである。ケンゾウは力量を比較して、圧倒的では無いものの、ランガーからは、一撃もその身に打撃を受けた事が無いのである。相性なのかなと、ケンゾウはシンタとそう言いながら笑っているし、このメバチックも、ケンゾウに攻撃を仕掛けた事が無いのだ、それは不思議な事であった。シンタもケンゾウに言う。自分の母ワカナもだが、怪物達に一撃も攻撃など受けた事が無いと言うのだ。
「ふうん、お前のママリンもそうなのか・・しかし、俺はメバチックに限ってだがな?何か不思議だよな」
「ああ・・それがどう言う理由なのかは、シンじいちゃんも、アマンばあちゃんも教えてはくれないし、パパッチもだ」
何かそこに理由があるのだろうか、その辺の事は、全く分からない。
「おお・・メバチックは強いけど、ランガーを押しているように見えるぜ」
これは、互角以上の戦いとなった。何とランガーが押されているのだ。ランガーは、ワクイ軍団の中でも最強の奴だ。それがメバチックの素早い動きに翻弄されているのである。
「くっそおっつ!」
再び叫んだランガーは、持っている手裏剣風の武具をメバチックに投げつける。しかし、それは悉く尾に弾かれ、避けられるのである。その間にメバチックの尾に張り飛ばされ、何度かランガーの体が吹っ飛ばされた。ランガーはその距離を少し開けて後退した。そして、ごそごそと自分の服にあるポケット風の袋をまさぐる。この袋が曲者なのである。何が飛び出して来るのか分からないのだ。シンじいちゃんに聞いた所では、旧前世紀の古い戦争道具なんだと言う。趣味で源体が集めていた物を、ワクイが与えたのだろうと言う事だった。その中から一つを取り出し、得意の投げ道具・・これはブーメランと言う武具らしい。メバチックは自分の後方に飛んでいったその武具を、不思議そうな顔をしながら見送った後、ランガーに向かった。だが、ぐさっつ!音がした。それはメバチックの後頭部に直撃したのである。




