第1章 進む
シンタは、かなり短時間に戦略まで身につけようとしているアカネに、少したのもしさを感じながらも、まだ不安の気持ちも大きかった。恐らく二人合体でこのような作戦をしたのも初めての事だろう。今まで、アカネはやっぱり妹であり、それも過保護に育って来たから、兄として自分が守ってやらないといけない、しっかりしなきゃならないと頑張って来た。しかし、庇えきれない事も多々あって、何度かアカネも、勿論自分もなのだが、怪物達にぱっくんとされてしまった。その都度、痛みを感じながら、次ならどうすると言う事を体で学んだ。穴からニ人で初めて出て、この一ヶ月の中で、食う事、闘う事、食われてしまう事までをも体現して来たのである。しかし、何か、食する度に自分達の身体的能力や、頭脳も上がって来ているのだろうか、レベルアップしている事には彼等も気づいては居なかった。穴から初めて二人だけで出た時には、穴から比べればどんよりしたこの空を見ても、外って明るいんだなあと言っていた瞬間に、二人とも同時にミミッチに、ぱっくんされてしまったのである。そこは特にお腹もすいて無かったから、ミミッチの匂いには気付かなかった。この怪物には牙があっても、飲み込むのが主であり咀嚼タイプでは無いから、痛みはあったが、他の怪物に比べたら、これも後から分かる事だが、余り感じる事が無かったのだ。そのミミッチの腹を突き破り、この怪物を倒したのである。これが二人にとっては初の闘いであった・・かに見えたのであるが、ミミッチは再生して何度も二人を襲って来た。そこで気づいたのである。ソードも振ったし、サーベルもめちゃくちゃ振ってその体を切り刻んだが、何度でもこのミミッチが再生するのと言う事を・・。そこで、めちゃくちゃに攻撃する中で、ある一点、口から50センチ下方にある首輪のような帯を切ると、再生しなかった事を知ったのであった。
そこで学んだのだ・・こいつらは、父シンゾウや自分達と恐らく違う。不老不死では無いのだと。弱点が必ずどこかにあると分かったのである。
そして、シンタは言った。
「アカネ・・もしこの作戦が成功したら、まずは腹ごしらえだ。今までで一番特上だと思うあの球は、木の実と言うんだよな?たまにママリンが採って来てくれたが、あんなにでかくは無いけど、小さい粒状のものだった。形が良く似ているからさ」
「うん、そうだね、とにかくさ、まずは食べるのが先決だよ、お兄い」
「よっしゃ!なら、右前方にどうにか『感車』が通り抜けられそうなスペースがある。そこは森を抜けていると思うんだ。そこへ向かうぞ」
「うん!」
知らなかったが・・『感車』の速度は、実は光速だったのである。二人が念じた速度はとにかく速くだった。つまり、そんな森等あっと言う間に突き抜けて、アカネがサーベルを用いる事無く、『感車』はその実らしきものを突起が出現し、突き刺していたのである。何が起こったのかは、二人が知る由もない。だってそれは瞬きもせぬ間の出来事だったからだ。




