第1章 進む
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「きゃああ!」
「うわっ!あっぶねえ!」
アカネは叫び声をあげ、シンタはとっさに『感車』を後退させた。飛ぶ羽は持っていないようだが、木から10Mは離れているだろうシンタ達の『感車』に、ほぼ到達出来る位のジャンプ力があるようだ。その化け物は当然地面に落ちたが、そこを今度は、
「ぐぁああああ!」
大口を開けた、これも初物だ・・何が初物って?って。突っ込みを入れている場合じゃない、そのトゲトゲの刀のようなイボを体中に纏った怪物が襲おうとする。
しかし、その毛むくじゃらのこちらもシンタが言う所の化け物は、かろうじて身を躱して樹上に戻った。
「樹上も地上も、ここはめちゃくちゃ危なそうだなあ・・」
シンタもアカネも、少しどぎまぎしていた。両怪物達は強そうだ。簡単にはここはいかないだろうし『感車』の中に居るだけでは、どうしようも無いのだ。かろうじて自分達の身を守る事は出来るが、あの美味しそうな匂いがする誘惑には勝てそうに無い・どうするか・・そこで二人は考えた。
「アカネ・・俺は考えたんだけどさ?例えばこの『感車』で、猛突進して、あの玉状の美味しそうな物にどすんとやって、木から剥がせられないかな・・そしたら、この『感車』の半分位の大きさだから、その反動でちぎれたら、お前のサーベルで突き刺して、安全な所に運ぶ・・どうだ?」
「なかなか良いアイデアだよ、お兄い・・でもさ、あの大木は密集しているし、あの球までそんな隙間があるのかな・・」
「だから、隙間のある場所を探せよ、お前は鼻、俺は眼だ。そして、コースも設定しなきゃならない。俺達がそれを『感車』に覚えさせたら、後はお前がそのサーベルを使うタイミングだけだと思う」
「分かった・・かなりたくさん『球ちゃん』があるようだから、絶対探して見る。また是非食べたいからさ。お兄いも、まだ危ない奴が居るかも知れないし、この森から飛びついてきた奴から距離も、もう少し『感車』の距離をとった方が良いと思う。中にはもっと跳躍してくる奴も居るかも知れないからさあ」
「おっと・・アカネ、お前もかなり色々と考えられるようになったな、おう、そうしようぜ」




