第1章 進む
彼らは正直苛ついていた。毎日起きては、化け物達が襲って来る。食事だってミミッチを食べれば1週間は何も食べずとも持つ。それに、第一には闘う為にこの地区をうろついている訳では無いのだ。必要とあれば闘うが、望んで闘っている訳では無いのだから。
その時、シンタ達の前方に初めて到達した森林が眼に入った。かなりの大木が生い茂る森のようだ。大抵・・こう言う場所には怪物が待ち構えている。しかし、何かに引き寄せられるように彼等の『感車』は向かっていたのだった。
だが・・そこはやっぱり危ない世界であった。
ぎゃっつ!ぎゃっつ!甲高い鳴き声が聞こえた。二人は勿論『感車』の中だ。しかし、持っていた食料の底が尽き、どこかで調達しないといけないので、ここまで余り見た事も無い、森林におびき寄せられるようにここまで来たのだが・・。
「アカネ!周囲を良く見ていろよ・・やっぱりここも怪しさがむんむんと漂っている。この鳴き声って森林の樹上だろうな、やっぱり」
「でもさ・・何か美味しそうな甘い匂いがするんだよ、お兄い」
「そうか・・お前はとても鼻が利くからな、じゃあ、食い物は確実にありそうだな。ここは闘うしか無さそうだが、相手を良く見ないとな」
「うん・・眼はあたいより数倍も良いお兄いに任せるよ。あたいは匂いの方向も見とく」
「おう・・」
かなり危ない奴らが居るようだ。それも一頭、二頭では無さそうだ。
「居た・・真っ赤な眼をして、手足の非常に長い、黒い毛に体中覆われた、俺達の3倍位体が大きい奴だ・・それも数十頭は居るぞ。これは闘うと言うのは無理だな」
「あたいも・・お兄い・・見つけた。何か・・でかい丸い球のような物が木からぶら下がっている。あれから良い匂いしているようだよ」
「そうか・・それが怪物達の肉とは違う、今まで食った事のない食べ物のようだな。俺も匂って来たぜ。これはミミッチより何倍も美味そうだな」
「どうする?お兄い・・」
「勿論、あれを採る・・けど、ここは考えなきゃな・・この相手をもう少し観察しなきゃあなあ」
そう言っている時に、その怪物は、木からかなり跳躍して、ほぼ『感車』まで到達するかの距離まで飛びついて来たのだ。




