第1章6節 そして動き始める
「現世には、もう全てが不明な事ばかりだ。父シン、母アマンの話をした時もそうだったそうなんだが、そんな事は、感車にも記録等はされては居ないんだよ。また、リンドウ、ケンゾウを見ても、本来はお前達はワクイの意志コントロール下にあって当然の立場、しかし、ここでワクイには、そこまでの準備をして来なかったのだなと言う事も見えて来た。それは、父シンでは無く、俺・・シンゾウの存在が、それ程ワクイにとっての注視すべき存在では無かったんだろう。ワカナと伴侶になった時も、恐らくかなりの部分で許容をしていたんだと思う。つまり、父シンを監視するが為であったのだろうと思う。しかし、その思惑は恐らく外れた。ワカナは、マインドコントロールされない自分の意志を持っていたからだし、父シンと触れた事も大きい。そしてリンドウ、ケンゾウもそうだ。シンタ、アカネに出会い、マインドコントロールが解けたと見る。いや、お前達にはそんな自覚なんて無いだろう。だが、アカネには俺も知らない能力があった。分かるな?」
「うん・・アカネっちの、それが個性っつうんすかね、脳内に強烈なものが入り込むんだ。だけど、悪意じゃなく、ワクイとは全然違う、何か安心感のようなものが」
ケンゾウが言うとリンドウも頷いた。言葉は多く要らない。それだけで良いのである。
「お前達には一度に情報を与えるより、体感しながら、このやり方って言うのかな、俺だって先が見えている訳じゃ全く無いんだよ。父シンの時代がそうであったように、そんな情報は、組織が分断されていて、個々に与えられるものじゃ無かったんだよ。勿論その時代のワクイが、意図的にそう誘導していた事も聞いている。現世なんて、もうそれ以上の人類滅亡の時代なんだよ。本来地球上に生息していた生き物だって、ガラーク、ミミッチ等は再生細胞体に位置する。だから、俺達にとっては確かに有益な栄養素は含まれていても、完全食では無い。つまり、この地球の完全食は、このミネラル水、ミネラル鉱結晶砂、地蛇、地ハチ、地飛蝗、ゼニゴケの6種なんだ。それを求めて俺は地上に出ていた。シンタ、アカネの成長には、確かにガラークや、ミミッチも有効だからな、それを自然に捕獲して来た。又、コモリゴンもそうなんだけど、お前達にはそう言う事は教えて無かったからな」
「え・・コモリゴンって・・攻撃力はあったけど・・」
「ふふ・・美味しいとは思わないだろうが、実はミミッチと混合して焼くと、絶品の味になる。俺の科学的根拠も勿論無いけどな、なにか不純物が取り除かれると思っているんだよな」
「へえ・・知らなかった」
シンタ、アカネが互いに顔を見合わせた。




