第1章 進む
そう言うシンタ、逃げるのも普通の戦略なのだ。勝てない相手に全力を出し切るのも無駄な事だ。また闘うルールなんて有りもしないのだから。だって、食うか食われるかの二つしか無いのだ、選択肢は二者択一しかない。また確実な事は、こんな怪物であっても、ばらばらにされて焼かれて食われたら再生なんて言葉は、不毛だ。間違いなく死ぬ・・不老不死なんて言うものが絶対では無いのも分かる。ただ、この二人がそうなった時どうなるかの検証は無いが・・。この二人は『感車』に飛び乗り、逃げるのであった。それは正解だろう。そんな根性論が生きる世界では無さそうだし・・。
そんな移動を繰り返している二人だが、A地区内からも恐らく出られては居ないのだろう。そこは巨大な盆地になっていて、何でも隕石が衝突して出来た窪みだそうだ。隔絶された世界が、実は、このようにA~Zまであるようなのだ。この地区でさえ、こうなのだから、他の地区がどうなっているのなんて分かる筈も無かったし、パパッチが食われたと言うのもA地区であるとは限らなかった。しかし、シンンタは、何故かこの地区を制覇しないと次に進めないような気もする。それも感覚である。何となく思うのだった・・。
「お兄い・・どうしてこのA地区の周囲には絶壁の山があるの?」
「それもちらっと聞いたんだけど、そのワクイが隕石をこの地球に落としたらしいんだ」
「隕石って・・何なん?」
「そうだなあ・・俺も分からねえよ。けど、想像するには、巨大な石を空から落としたんじゃね?」
「ふうん・・そしたら、こんな山が出来るのね?」
「は・・でもまあ、考えるなよ、アカネ。パパッチか、ママリンにどちらが先に会えるのか分からないけど、それが叶った時に質問攻めにしろ。或いはワクイじじいに聞けよ。俺に聞いても分からねえ事は一杯あるんだからな」
シンタは、苦虫を嚙み潰したような顔で答えるのだった。そう言えば、アカネが何で?どうして?って質問をする年頃なのである。シンタは、自分が教えても貰っていない情報は伝える事が出来ない。そんな自分にも少し苛立っているようだ。
そそり立つその壁は『感車』で上空には飛び上がれない。まるでそれを阻むように、100Mの高さには豪風が常に吹いているし、50M上空には、今度は地上付近には降りて来ないが、空を飛ぶ化け物、コモリゴンが高速で飛び回っているのだ。空を飛ぶ全ての怪物達は、そのコモリゴンの餌食になるのだ。しかし、『感車』までの下空までは降りて来ないようだ。彼らが10M~20M内外の空を移動するのも、そう言った意味があるようだ。それだけはシンゾウが教えてくれていたようだ。




