第1章6節 そして動き始める
ここで、またシンゾウは予測を超える行動を示すのだった。いちいち言語では伝達しない、そのアカネも使う言語中枢に直接伝えたのだ。ワクイの眼前から忽然とケンゾウ達が消えたのだ。
「お・・またいきなり消えてしまった、ケンゾウ君達が・・」
ワカナが反応する事は無い。
そのケンゾウ達は又地下湖に戻っていた・・
行ったり来たり、まるでシンゾウの行動原理は読めない。行き当たりばったりでは無い事は分かっていても、このYゾーンや、今回のWゾーンにしても未解明の所ではないのかと。シンゾウが知らぬ怪物達も無数に居るようだし・・と。
そんな不思議そうな顔をする子供達にシンゾウは微笑みながら、
「ふふ・・またこの作戦についてはゆっくりお前達に説明してやるさ」
ワクイが、呟いていた。
「正に神出鬼没だね・・シンゾウ君の行動には規則性が全く無い。これが第六感と言うものだろうか?それが、私を少し不可解にさせるのだ。しかし、これを意図的な行動とは認めたくは無いが・・」
ここでもワカナは黙っている。ワクイの思考する先にシンゾウの行動があったならば、即ちシンゾウ自身が隠密者と自ら名乗る資格は無くなるだろう・・きっとそう言う事なのだろう。まだまだ、こんな程度の事で、現在動き始めたシンゾウがこの失った期間を埋めようとしているのではなく、子供達を含めた4名となった仲間を引き連れ、新な局面に突入しようとしているのだろう。そこでワクイに看破されるようでは、この先を進む事など到底無理であろうとワカナも思った。またそうなれば、地下生活を選択しなければならなくなるに違いない。しかし、その地下に又戻ろうと言うシンゾウの意図は何なのか・・それもワカナは気になっているのであるが・・
そして、地下湖に再び戻ったシンゾウに、
「あの・・聞いて良いっすか?」
ケンゾウが珍しく先に質問をする。
「何だ?ケンゾウ」
「どう言う意図が何であるのか、やっぱり先に教えて貰って良いっすか?勿論、シンゾウさんの言う通りに動くっす。けど、行ったり、戻ったり、又行ったりとその繰り返しが良く分からないと言うか・・」
「うん・・意図か。無いと言えば?」
「あ・・そりゃあ、それで・・」
ケンゾウが慌てている。そんな言葉が出るとは思わなかったからだ。




