第1章 進む
「又来たよっ!」
アカネの甲高い声が聞こえる。もう何十頭を倒したのだろうか・・。今まで出会った20種の怪物については、倒し方も学んだ。しかし、それだけこのA地区だけにでも、既にあれからも10種の得体の知れない怪物達と出会って来た。シンタとアカネもそれから何度か食べられたものの、その度に復活した。少し気づいた事は、怪物達に食われる度に、自分達に何か漲る力が沸くように思えるのであった。食う事と食われる事がスキルアップする?いやいや・・そんな選択肢なら、アカネの言うように、誰でも前者を選ぶだろう。
今度の怪物も、出会った事のないとても頑丈な体を持った、まるで黒い岩石の塊のような奴だった。
どがん、がががん!二人は目いっぱいそれぞれの武具を、大上段から振るった。しかし、びくともしないのである。
「こいつ・・手強いぞ」
「全力でやっているけど、すごく皮膚が硬いよ、お兄い」
アカネも驚いていた。二人が地上に出た事は無かったのか?と聞かれれば、それは初めての事では無い。パパッチやママリンとも、両親が揃って一緒にと言う事は何故か一度も無かったが、どちらかの親とは何度か地上に出て『感車』に乗ってあちこちに連れて行って貰える事はあったし、実際に出現する怪物達の名前を教えて貰う事もあった。しかし、闘った事はこの1ヶ月内で初体験であり、既に50戦を超えているのだった。その中で、最強の敵と今遭遇しているであった。
「こいつの名は・・知らね・・」
「何よ、それは」
「俺だって知らない事一杯なんだよっ!だって、教えて貰ってねえんだもん」
「じっとここで対峙していたって埒があかないよね。お兄い、逃げる?」
「おう・・俺にとっては初の選択肢だが・・そうするか無いようだな、食われたくもねえしなあ、唯一こいつの弱みは、動きが遅いようだけど・・それっつ!逃げろっ!アカネっ!」




