第1章6節 そして動き始める
「いや、パパッチの言う通りにするさ。どうせ、全てのゾーンを確認すべきだと思うしさ。Yゾーンにはまだまだ得体の知れない地怪物が居そうだし」
「ふ・・Hゾーンにだっているさ。ただ、Hゾーンの食中植物は匂いに敏感だから、今度はゼニゴケを体に塗って行く」
「うん」
こうして、次なる作戦がスタートした。Yゾーンに行く前にHゾーンに行く・・何とも不可解な行動だったが、今度は感車で行き、感車で行動する。そこに意味がありそうだ。謎解きゲームをやっている訳では無い。種明かしは、成功してからこそ披露できるものだ。失敗する事もまた前提にあると言うシンゾウの行動は、恐らく全て理論上、計算の上で成り立つワクイのような者には理解が出来ないだろう。だからシンを恐れたのである。しかし、そのシンは機略も備えていた。計算外のものだが、第六感と言う能力は答えなど導き出せ無いのだ。
「さあっつ!アカネ、前方の森全てが食虫植物だ。食虫と言うのもおかしいか、食怪物植物?食動物植物・・まあ、どうでも良い話だな、焼き尽くせ!どうせ、根までは焼けないんだ。絶滅する事も、消滅する事も無いからな」
「うん!」
じゃあ、何の為に?リンドウが首を傾げながら、爆吹き矢を連続で打ち込んだ。どかん、どかん・・それは凄まじい爆音を立てていた。
「それじゃあ、引き揚げるぞっ!」
「え!いや、あの・・・」
一体何の為にこんな攻撃を?滅しないと言えど、無用な戦い?・・では無いけれど、反撃すら受ける事のない、数分の事だ。感車に乗り込むと一瞬で今度は移動する。
「今度はHゾーン・・一体何があったのだ・・」
ワクイが注視するが、一方的に焼き焦がされた食中植物の残骸と、辺り一面に立ち込めた白い煙に覆われて、詳細は分からなかった。
「シンゾウ君の気配が無いようだ・・一体」




