第1章6節 そして動き始める
「今だっつ!シンタ」
この連続攻撃は全く見事な連携であり、シンタは悶絶し始める瞬間に、その畳2枚分もある大きな舌を真っ二つに切っていた。ドスン・・舌が地面に落ちた音である。
ケンゾウは、もうその大きな地蛇の胴体を、眼には見えないが巨大な出刃包丁で切るように、しゅぱしゅぱと鞭で切って行く。更に驚くのはシンゾウがいつの間にか、感車を待機させていて、その感車が満杯になると、瞬間に消えて行き、また戻ると、ぽんぽんとその切り刻んだ胴体をまた感車に乗せる。非常に手慣れた素早さで子供達が、まだ地蛇に向かい、アカネが中心だが、こんがり焼けた部分から片づけているのである。この間、実に5分程度だったと言っておこう。そうすべき時間でもあったかのように。しかし、シンゾウもそれは予測出来なかった事だと後から言うが、推定数十トンになる地蛇は、こうして瞬殺され、また跡形もなくそのYゾーンから消えてしまったのである。
「むうっ!Yゾーンで何かあったと思っていたが、地蛇だと?こんな大蛇がまだこの地球に?このゾーンだけは、不明の地であったが、シンゾウ君がここで何かをやらかしたのか・・むむ・・既に彼の痕跡は消えている」
ワカナは、内心にこりとしていた。勿論シンゾウが何かを仕掛けた事は、確かだし、ワクイがどう言う経路のアンテナを持っているのかどうかは分からないが、Yゾーンに行った事が分かっていたかのような口ぶりだった。やはり終始、夫シンゾウを監視しているのだと思った。しかし、隠密行動を常にとる夫は簡単にその動が分かったとしても姿を現す事は無いだろう。ワクイでもなかなかシンゾウを捉える事は困難なのだ。
そのシンゾウ達だが、あっと言う間にまたAゾーンに戻っていた。
「パパッチ、Yゾーンをもっと進むんじゃなかったっけ?」
「ふ・・計画変更さ。俺が未解明だったこの地蛇が、捕獲・捕殺出来るなんて思わなかったからな。アカネ、思う存分食って良いよ、もうお前は待ちきれないようだ。さあ、皆食え、食え!ははは」
シンゾウは上機嫌であった。こんなに子供達が成長している事を嬉しく思うからだった。




