第1章6節 そして動き始める
「今、地カエルのエリアを通過した。こいつらは数が多い、倒すとやっかいだぞ。毒息を吐く。周囲が見えなくなったと思ったら、無数の子カエルが姿を現すのさ。その数はざっと見ても10万じゃ下るまい」
「ふえ・・そんな増殖しちまうのかあ・・」
「だろう?レベル的には2だが、厄介度的に見れば8クラスなんだよ」
シンゾウがため息をつきながら答えた。
「本当にやっかいだなあ」
「相手にしたく無いだろ?だから、この紅粉はまず、相手の嗅覚を遮断しているのさ、また磁赤鉄鉱なるこれは、電磁波や、ソナーを阻害する。まあ、おいおいその辺の事も分かるだろうが、聴覚、視覚を阻害すれば、残るものは何だ?」
「触覚?臭覚って言うのもあるよね」
「そうだ、味覚なんて言うものは、口に入れてからだ。触覚は、触れてからしか分からないと思うが、しかし、振動波と言うのを感じる怪物が居る。それが地モグラなのさ。臭覚もあるよな」
「だから、ここも順を追って探索に来たと言う訳っすね?」
リンドウが聞く。ケンゾウは質問自体を余りしなかった。元々無口な旧世代の男だったそうだから。
全ては今実習を行っている先生と生徒のようなものなのだ。とにかく生きた教材は現地巡りしかない。それが彼らを体力だけではない知力を養うのだ。今は無用とシンゾウが言う戦いは、ここでも必要が無いのだ。出来れば避けたいのである。何度も繰り返す。
「ここから先へは、俺も進んだ事が無いんだ」
シンゾウは、眼前に迫る小高い丘を指さした。高さは50Ⅿ程だろうか、シンゾウが言う所の身長の30人近く程である。シンゾウは176センチあった。ちなみにケンゾウは子供達の中では一番大きく、164センチだ。今からどんどん彼らは伸びるだろう。しかし、彼らはまだ子供の体なのである。再生体とは言え、リンドウもケンゾウも子供なのだ。ついでに言えば、シンタが156センチ、アカネが147センチだ。それだけ彼らは小さな体に、旧時代の人類等遥かに凌駕するパワーを秘めている。その時代にシンタ達が存在すれば、道具等必要もない無敵の人類であっただろう。しかし、現世では非道具では通用しないのだ。
その丘は徒歩で超えるしか無かった。迂回路はありそうだが、そこにはやはり地蛇と言う巨大な蛇が居るらしい。その地蛇は、やはり旧時代から生き抜いてきた生体らしいが、勿論食った事は無いとシンゾウは言う。逆に巨大過ぎて飲み込まれるだろうと笑っている。アカネはどんな味なんだろうかと、想像していた。苦笑するシンタだった。




