第1章 俺達って何者?
確実なのは、僅かにシンじいじと呼ぶ、シンと言う祖父が遺してくれていた原型は乗り物らしいのだ。そう言う物もまだ一部に祖父シンが存命の時にはあったそうなのだが、何でもその製造時には300年程度は持つだろうと言われていたらしいものの、もう500年経っている。なので、そんなものは既に存在しなかったと言う事になっていると言う話だ。ただ、その中に積んであった僅かな先祖の道具があって、穴の中に持ち込まれていたのだ。そんな事をパパッチは言っていた。そのパパリンの名前は、シンゾウと紹介もしているが、そのパパッチは確かに超A級の怪物デラルクにやられたものの、シンタが言うように、彼もどうやら不死身のようだ。復活と言う言葉を使っている。それよりは、やはりママリンを攫ったと言う、和良=ワクイって奴を探さねばならないのだ。
「ねえ、お兄い、その和良って言うのは強いの?もしママリンを見つけても私達だけで勝てるかな、パパッチもデマルクに勝てないんだもん、きっと強敵よね」
「でも、和良=ワクイって言うのは俺達の母方のじいさんなんだぜ?闘うのかあ?」
「でも、感情が無いって言う位だから、きっと血縁なんて無関係だし、そう思うのよね、いかついごつごつの顔をしていて、狂暴なんじゃないの?あたい達にだって襲って来るんじゃね?」
「おう・・そうかも知れないなあ・・でも俺達人種型をしているとは、パパッチは言っていた。ばあばにそれを聞いたそうだが、ママリンはそのワクイじいさんが攫っていったんだから、まさか娘を食やあしないだろ?」
「え!じゃあ、じいちゃんがママリンを食うって有りなの?」
アカネは、眼をくりくりさせて驚くのだった。
「さあな・・だって、ママリンも不死身と言う体質なんだぜ?死なねえんだからさあ」
「だよね・・」
「まあ、何にも今の俺達には分からねえんだ。とにかく進むとしか俺は言えねえわ。だって、そう言う肝心なところをまるっきり教えて貰っていないんだからなあ・・でも、地上に出て初めて分かったよ。パパッチが相当危ない事をして食料を手にしていたとはな。そこは感謝しなきゃな、『感車』の中で言うがな」
「何よそれ、お兄いのそのダジャレって言うの?そんなしょうもない言葉ばかりパパッチに教えて貰って、なんだか、あたいも寒いよお」
そう言えば、穴の中ではそんな事もまるで感じ無かったが・・
地上では日中は暖かいものの、夜になると結構寒いのだ。気温が下がるらしい。この『感車』の中では、そんな冷暖房がある筈も無し。兄弟はくっつきあって互いの体温でその寒さを凌ぐのであった。
何故こう言う事になってしまったのか、それはこれから辿る数奇な出来事に委ねるしか無かった。彼等が、せめて肉親の兄妹であった事だけが救いのようだ。四面楚歌・・全て眼前に現れるものは敵なのだ。




