第1章6節 そして動き始める
「そうだったのか・・じゃあ、パパッチは研究者的な者?」
「ははは・・そうだな、そう思って間違いは無い。とにかく調べる、それが大事なんだよ。父シンの言う通りだと思っている。それがあってこそ、初めてこの地球上を探索出来る。感車だけでは出来ないんだよ。地球上のエリアの配置を観察出来ても、地図が描ける位の程度さ。確かにそう言う物が必要だとしても、デマルクは既に数百、数千に分裂しただろう。一気にこのエリアの壁等は破壊されるだろうしな」
「じゃあ・・パパッチはそれを逆に計算して内部破壊をしたって言うの?」
「ふ・・ワクイが仕掛けるなら、逆にその手に乗ってやろうと思った」
「やっぱりパパッチは策士じゃん」
アカネの眼がきらきらするのだった。
恐らく、シンゾウには当時シンの四主或いは、四抜と言われた仲間との行動で身につけた自然な策謀と、アマンの前面には出ないが、超抜なる知性とによって地球再滅亡の危機を乗り切った。それこそ、即待つのは死に直面しながらも生き残って来た事は、地球全方位の探索と、地下通路、空洞の探索だったのである。それをシンゾウには徹底して伝授したのだろう。シンゾウは武力の者と言うより、策謀を持つ研究者的立場の方に重点をおいていた。
「シンタ、アカネ、リンドウ、ケンゾウ。良いか、この現世で生き残るのは容易な事では無いだろう。俺達が生き残り、そして父シン、母アマンが復活するその時まで戦う事が避けられないにしても、可能な限り回避しよう。ワクイを完全に敵対すると、とんでもない事が必ず起きる。いや、既に起きているのかも知れないが、今は隠密行動をする。良いか、お前達は今の力なら、土モグラを倒せるかも知れないが、戦わねば敵では無いんだ。そこを間違えるなよ」
「はいっ!」
戦う事が全て・・リンドウもケンゾウもその言葉が新鮮に聞こえた。そして、心穏やかな殺伐とした自分達の過ごしたゾーンから離れてシンゾウに連れられて行った『龍の巣』でリフレッシュした気分になった。これが進む方向なのだと今は思っているのだった。
シンゾウの作戦・・それが現世を生き抜くため。その延長上にワカナの所在が掴めるかも知れない。派手な動きは厳禁だ。ワクイが常時監視している事は明白だ。その為にシンゾウはその行動を隠密として過ごして来たのだ。ワカナも、ワクイと言う存在が今となっては、害悪とさえ思い始めていたのである。しかし、善悪が分かる時代ではない。正しいのか正しくないのかを誰が決めるのか、評価するのか。自分の邪魔になるもの排除するのが、ワクイの選択なら、シンゾウの選択は無用な争いを回避する。排除を必ずしも選択していない事になろう。
Yゾーンも広大だった。まばらに灌木は見えるものの、地上に怪物の姿は無かった。ただ、不気味な気配はずっと漂っていた。




