第1章6節 そして動き始める
「だから、妻ワカナを逃れさせる為に、全力で俺は引っ張った。その反動で妻ワカナはデマルクの体内には吸い込まれなかったが、俺は吸い込まれたんだよ。けどな、デマルクは基本的にお前達の*ママリンを襲わないと言う前提があった」
*途中からワカナをママリンとシンゾウは呼ぶ。
「それは何故?」
「分からない・・しかし、ママリンには怪物達を遠ざける、ある特殊な匂いがあるんだと思うんだよ」
「匂い?」
「ああ・でも、俺にはその程度しか分からない。他の怪物達にも、ママリンは一切襲われた事が無かったからね」
「じゃあ、怪物達は皆臭覚があるって事になるんだね?そして、ママリンを連れ去ったのは、ワクイ自身なの?」
「臭覚ならその通りだ。それがあってこそ、食は成り立つと言う前提だ。しかし、ママリンを連れ去ったのは・・いや・・それは想像でしかないんだが、違うと思う。ワクイは恐らく地球上には居ないと思うんだよ」
「居ない?何で?」
アカネがそこは聞く。
「怪物だらけの地球に、母アマンが言う粘菌と言う遺伝子を組み込んだ種子或いは種菌を地球上に振りまいたと言うのは、間違いないだろう。その種が地球上で次々と変異を繰り返し、今も無限に近い位増殖を続けている。つまり、そんな地球にわざわざ降り立って、自分が居る必要も無いだろう?飛機の中で恐らくワクイは居るんだと思う。これこそ、火星でずっと過ごして来た500年間と同じであって、火星では実現出来なかった環境が、現地球にはあると言う事さ。その実験場こそ現地球なんだよ、それは火星じゃない」
「そこは、断言しているんだね?」
シンタが言うと頷くシンゾウ。
「ああ、父シンの体が動く限りと言う事で追跡していたんだ。未曽有の地球規模の災害が起こった時、その時にワクイがじっと地球内部で過ごしていたと思うか?」
「あ・・いや・・無理かも」
「だな・・災害が収まるまで月や火星に感車で飛んでいたんだよ。だがな、宇宙って簡単に言うけど、そんな生易しい世界では無いんだ。重力と言うのが地球とは違うし、ふわふわと体が浮くそうなんだよ。だが、俺も行った事が無いからな、俺もそこまでの知識しか無いが」
「へえっ・・!」




