第1章 俺達って何者?
彼等二人の話を理解出来る者など、今の所は居ないようだ。その昔を語れば、不毛の大地に遺伝子操作をした植物を植え、そして緑豊かな大地が再び復活したそうだが、確かに現在は、かなりまばらだが緑はあるし、大きな木が生えている森林もあるものの、そんな場所に近づけば、又化け物と彼らは呼ぶが、色んな危ない生物が襲って来るのだ。ちなみに彼らが乗るのは、嘗ては宇宙などへも行けたらしいが、せいぜい高さで、50メートル程度の空中を浮かぶ乗り物だった。それでも時速500キロメートル程度の飛行が可能なようだ。その昔はMRとか呼ばれたそうだが、もはや度重なる大地震、津波等によって二度、三度地球上にあった人間族の居住地は破壊され、その時にあった機械類的な物は壊れてしまったそうだ。今は、勝手に名付けている。『*感車』って・・何でも母方の祖父がそれを改造し、造ったらしいのだ。俺に感謝しろよと母ワカナにプレゼントした唯一の物らしいが、実際は違う意味らしい。
*説明はこの後あります。
詳しくは全く不明だが、シンゾウとワカサが出会って恋をし、そこで強引にワクイから引き離したのは、祖父シンのようだ。それ以降ワクイの眼から逃れる為に地下生活をしているらしい。それが祖父シンの最後のミッションだったのだとは、父シンゾウから聞いたのだが、良く意味が分からない。どんなミッションなんだ?それってどんな意味?祖母アマンは、寿命である130歳をまっとうし、その時には、とっくに亡くなっていた。僅かに祖母が遺したと言う書面があるだけで、祖父が読み書きを少し教えてくれた程度だった。
さて・・この『感車』に戻るが、確かに地面を走る事も出来るが、地面を走るなんて危なっかしい事は実際には無理のようだ。地上には、危ない怪物達がわんさかと居るからである。これにも理由があるらしい・・まだ300年前の地球には、ここまで地上には怪物も居なかったそうなのだ。そして、殆ど木も生えていなくて、シンが選択したのはやはり地下であって、保存されていた食料を食いつなぐ生活だったようだ。勿論、そんな『感車』なんてある訳もない。シンゾウとワカナが出会ったのも250年前だと言う事になるらしい。そして、祖父シンは200年前にやはり500年を生きて亡くなった。
だから、その『感車』と言うのは、この時代にワクイがマッチするように、突然地球に舞い戻り、不便であろうからと500年前の祖父シン達が使っていたMRと言う乗り物を改良し、娘のワカナに与えた。やはり何もない地球には、ワカナの脳波を感知し、操縦桿等が不要で、その思念で動かせる乗り物らしいのだ。だからこの二人には、コントローラーが無くても、母の血を引くのでこれを操縦出来る能力が備わっているらしい。じいちゃんに感謝する意味でもあるかも知れないものの、二人の恐らく観念・感覚で動かせる事が出来るので『感車』と呼んでいるらしいのである。だが、そんな機能や名前等は実際どうでも良くて、全くこの世界では関係も無く、無意味でもあるから、安全な空に浮かんでいれば、外敵に襲われる事は少ないのからこうやっているだけだった。ちなみに出かけてデマルクに食われてしまったパパッチは、余り『感車』を使う事は無く、シンタと出かける事が数度あった時には使ったが、その時にも置いて行ったので、二人がこうして使っているのだ。つまり、シンゾウも使えたと言う事にはなるが、その辺は疑問も今は沸かない。不思議に思う思考も働かないのだから・・。シンタは、操縦を教えて貰わなくてもすぐ使えたし、アカネも今では、既に操縦法を会得しているらしい。この『感車』を上回る速度を持つ、空を飛ぶタイプの怪物も、今の所はここをA地区と呼ぶそうだが、居ないようだった。




