第1章6節 そして動き始める
「よしっ!今だっ!思い切り引っ張れ!シンタ、お前は先に浮上し、ケンゾウを手伝え!」
「うん!」
シンタは猛浮上をする。とてもそれは早いスピードであった。
「ふ・・何時の間に、こんなスキルアップを」
シンゾウがにこりとする。リンドウには合図で示した。そのリンドウも、シンゾウが思ってもいない力でぐいぐいと糸を引っ張るのだった。
「ふふ・・リンドウ、こいつもこの湖の水が適応栄養だったようだな」
そして、ぐいぐい引っ張って来たものは、とても大きなうなぎであった。口はシンゾウを軽く飲み込める程大きく、全長5メートルは超えているのだろう。まさにこれも怪物と言っても差し支え無いが、攻撃はして来なかった。ただ、重く、かなりの抵抗力を示した。
「はは・・やるなあ、こいつも。剛力と言うものだろうなあ。流石に数億年も生き抜いて来た種だけはある」
そんなシンゾウの独り言などは、リンドウも聞こえない。しかし、力を最大限込めて引っ張って行く。そうすると、やや軽くなった。それは湖面の上からケンゾウ、アカネが糸を手繰り寄せている所に、シンタも加わったからだ。
徐々に湖面に引き揚げられる大ウナギ。ゆらゆらと、ぐねぐねと抵抗するが、水面に近くなると、シンタ達が大声を上げる。
「うわあっ!でかいわ、黒いわ・何これ」
「だからあ、大ウナギって言っているじゃんか、お兄い」
アカネは冷静だった。ケンゾウはアカネの指示・・つまりシンゾウの指示を受けて鞭をしならせ、それを湖面に激しく打ちつけた。
バシューン!バシッ!バシーッツ!
何度も打ち付ける中で、その鞭の先端が大ウナギの頭部に命中したか、大ウナギは抵抗しなくなった。




