第1章6節 そして動き始める
アカネが、この日何かに感ずいた。ゼニゴケを探し始めて、旧地球時間で言う所の3週間目だった。この『龍の巣』も、当然地球事変の中で無傷だった訳では無い。シン達が修復し、開拓した沢山の通信路、天然の晶洞、洞窟においても崩落して通れない所が無数にあった。その中に入れば、生涯脱出する事は困難だろう。シンゾウはその自分の能力を駆使し、全ての開拓してきた通路を綿密に記録し、記憶しているようだ。シンタとアカネは、決まった洞窟探検しか許されて居なかったので、ここがこんなに複雑で広大な場所であるとは今更知ったのである。
「パパッチ・・何か光っている気がする」
「アカネ、何か気がついたんだな?ほう・・とても狭い入口だが、あそこか?」
それはシンゾウでもやっと入れるかな?と思う細い洞窟の入り口だった。丁度その時、水深にして500メートル位になるだろうか、シンタとリンドウは同レベルに潜水能力が上がっていた。
ケンゾウには無理だった。シンゾウはケンゾウには、鞭の鍛錬をしておけと指示している。
不思議な事だが、シンタとリンドウは、水中でも互いにコンタクトが可能だ。つまり、会話が出来ると言う事。それは言葉を発する意味ではない、アカネとシンドウ、またワカナとシンドウ、アカネとワカナの会話との波長(この場合光波長と呼ぶ)のチャンネルがそれぞれ違うのだ。単純に言うと、言語のような光組成が違うと言う事。それを使い分ける事がシンゾウには出来る。ワカナとアカネは1チャンネルしか無いと言う事にもなるだろう。次第に彼らの能力は明らかになって来るが、全てはシンゾウが大きな鍵を持っている事に間違いはなかろうと思う。ただし、シンゾウが知らない事は無数、無限にあるんだとアカネに言っている。何故彼女と同行したかもそれが明らかになって行くのであった。
「あった・・こんな所に・・」
シンゾウがアカネの後から入った空間には、蛍光色を発したもしゃもしゃの緑色をしたコケが密集していた。




