第1章6節 そして動き始める
「良し・・と。ふ・・我が子だけなら、ここまでする必要は無かったが、俺の情報がデマルクに分析された今では、念には念を入れておかないとな」
そう言うと、シンゾウはいつの間にか、感車を傍に寄せていた。まさか、この空間に感車が入れるとは思っても居なかったが、最初からこの感車とは、この地下空間の中を行き来する乗り物だったようだ。ただしこの1機しか残っていないが。
ワカナは、突然途絶えたシンゾウとのコンタクトを試みていた。しかし、全く遮断されている事を悟った。アカネとの交信も無理のようだ。その様子はワクイが観察しているようだ。
「なかなかの策士だね、やはりシン君の子だ、シンゾウ君は」
ワクイの声が聞こえる。ワカナはいちいちそれには反応をしなかった。とにかく子供達には一番頼りになるシンゾウがついているのだからと、ここは自分の脱出方法について、思考するのであった。亜空間と言うが、ここが地球上の一つの地点である事に間違いは無さそうだ。脱出出来るチャンスを待つ・・彼女はシンゾウに託したのであった。
シンタ達が目を覚ました時には、大きな地底湖の前に居た。
「あ!眠ってた?俺・・アカネも、リンドウ達もだ」
「起きたか、シンタ。お前が一番先に目覚めたようだな。お前には、やはり一番長くこの湖で遊びながら過ごしたから対応力があるようだ」
「対応力・・?」
ぽかんとするシンタだった。シンゾウは優しい目で、
「ああ・・この地と言うか、シンタ、お前達とここで過ごしたのには意味がある訳だ。何も外の世界が怖い訳でもないし、ワクイの監視から逃れる為だけではない。勿論、お前の言う最大の敵がワクイであるならばそれは否定しないがな。お前は父シンからも色んな事を教わった筈だ。俺が知らない事もな」
「え・・うん。でも、パパッチが知らないなんて、俺も思っても居ないもんなあ」
「まあ、そうだ。感車があれば、過去の事とか、現地球の怪物等の情報は得られるだろうし、実際に身も守ってくれる手段となった筈」
「うん、そうだよ。寝る時も、外敵を気にしないで良かったもんね」
シンゾウは頷きながら、他の3人の様子も眺めていた。まだ3人は目覚めないようだ。




