第1章5節 復活したシンゾウ
「破壊したのか?デマルクを・・内面から?まさかの事だよ・・」
その声はワクイであった。姿を現したのは、その若い頃に瓜二つのシン・・これがシンゾウであった。
「ふう・・とんでもない時間が掛かってしまった。デマルクは、巨大な記憶容量を持ち、分析すら行う・・つまり、データ収集機械型の生命体・・いや、生命体と言うよりもう旧時代にあった人工物の機械そのものでもある。俺のデータも恐らく電送されている事だろう、ワクイに。だから、近寄りたく無かったんだよ、デマルクには。しかし、反面俺にとっても相当な仕組みが分かった所だ。確かにこの現地球には、このデマルクと言う生命体が必要なんだろう。ただ、この一体だけでは勿論無いだろうからね。デマルク自身、分裂・再生は出来ないでも、ワクイがこの地球に生命体の種をばらまいたように、必ずデマルクの複数の種はある筈だ。コピーは作れる。ワカナ・・聞こえるかい?」
その言葉は、テレパシーのようなものだ。つまり、シンゾウはワカナにその伝達方法を行ったのである。ワカナとシンゾウはずっと以前からこのやりとりをしていた事になるのだろう。
「ええ!ええ・・シンゾウ。はっきりと。でも、種の話・・」
「今は、君もそう言う情報を得なくても良いと思う。良いかい?君から俺の情報を得る為に、拉致・監禁しているんだろう。また彼にとっては、現地球は誰にも邪魔されない巨大な実験場だろうし、ワクイにとっては800歳に至る知の巨人だ。例えば、デマルク自体すらも彼の分身の一つであるとも言える」
「え・・」
ワカナは、ここで言葉を失った。その実体をワカナ自身が実は知らないのである。また800歳と言う年齢は、確かにシンから聞いていたので、では、自分はどうやって誕生したかも含めて、自己繁殖する仕組みすら分からないのだ。シンゾウが言う不可解、不明な事など無数にあるのである。




