第1章4節 そして、再び振り出しの地へ
シンタが、とても深い事をこの時に言った。幸いにもそれは伸び縮み自在の不可思議な乗り物『感車』だった。その乗り物は、旧時代のケンとシンを合作したような名前のケンシンと言う技術屋が、金属でもない、植物でもない、まして動物でもない粘菌と言う物に手を加え、開発した唯一のものだと言う。そんな科学が、かろうじて残っていた時代の恐らく大発明なのだろう。シンゾウがこれを隠していたのだ、シンの意向により。この感車をワクイは奪う事は恐らく出来ないだろうとも言っていた。何か確信めいた事までシンゾウは、シンタに話した事がある。しかし、その時のシンタに何が理解出来ようか、こんな不可思議且つ、危険極まり無い地上の現状において。ただ、断片的にシンタの記憶に刻まれている情報は、現実に直面する度に一つずつ階段を上るように確かなものとなるような気がするのだった。
ケンゾウとリンドウはミミッチを見て敬遠しようとしたが、アカネが焼いた事で、貪り食うように数頭を食すると、
「美味ええっつ!何これっ!」
二人の体が、黄金に輝き出したのである。まさしくそれは適合食材だった事に他ならない。シンタの思い付きのような行動が必然に変えたような気がした。
アカネもシンタも勿論食したが、彼ら程効果は無いようだ。もう、この食への栄養体の摂取は十分だと言う事か。
「俺らはアカネ、ようやく1頭分しか食ってねえけど、もう要らねって感じだな」
「うん、前より美味しいとは思わないよ。でも、ケンゾとリンドは何か適合食材だね、体は金色に輝いているし」
「おう・・ケンゾウも何か、人間型形態に近づいているぜ、ふうん」




