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初めての魔法

 昼ごはんに焼いた芋とメロの実を食べていたら、ユニベルとホーリーが小屋に剣と服を持ってきてくれた。ホーリーが「コレヲ使ウガイイ」と言ってテーブルに置いてくれる。

 布の服から茶色の皮の服、小さなナイフから細身の鉄の剣、それとバックラーに装備アップした。足元には茶色の革のブーツ。


「おお! なんかゲームのキャラクターみたいだ!」

「ゲーム? キャラ?」


 ホーリーが不思議そうに首を傾げる。


 数年前に城に迷い込んできた冒険者の持ち物で、夜にユニベルとホーリーが現れたら置いたまま慌てて逃げて行ったらしい。

 ノルテ大森林は強い魔力に満ちて危険だけれど貴重な素材が取れる、腕に自信のある冒険者が一攫千金を狙って貴重な素材を手に入れようとやってくる。

 城には隠蔽と忌避の魔法がかかっているがごくまれに冒険者が侵入する、しかしユニベルとホーリーが姿を現したら驚いて逃げて行ってしまう。

 ユニベルは意識的に姿を現さないと普通の人には見えないらしい。最初に和樹の前に現れたとき、見えないはずなのに目が合ってびっくりしたそうだ。和樹は城の魔法を避けユニベルにも会えたし運が良かったんだなと考える。


 和樹の世界には魔法が存在しないとユニベルに話したら驚かれた。

 それならと魔力診断をしてくれることになった。ユニベルが和樹に向かって「インスペクト」と呪文を唱える。


「魔力を感じます」


 ユニベルが和樹に答える。


「えっ、魔力がある?」


 魔力を感じるので魔法を実行できるのではないかと言われた。目の前で感じる一般的な魔力ともう一つ遠くにあって漠然と広がる不思議な力の流れを感じると言われた。その力の流れは遠すぎてユニベルでもよく分からないと言われる。


「そう言われても魔力や魔法なんか漫画や映画でしか見たことないし、それってフィクションだし」


 魔力があるといわれても和樹にとって、それは全くピンと来ない言葉だった。ユニベルの提案で取りあえず魔法の練習をしてみましょうと言われる。基本的に人族は魔力が弱く魔法を実行できない人の方が多いそうだ、しかし使えた方が便利だということで和樹はユニベルから魔法を教わることにしました。

 それにこちらの世界では魔法を使えると就職にも有利だそうです。魔法の能力が高いほど高給が取れる職業に就けるらしい。


 ユニベルが魔法を使うお手本を見せてくれた。初心者向けで最初に教わる魔法の一つだそうだ

「バーン」と唱えると薪に火が点く。


「おお! 本当に燃えた! 魔法だあ!!!」


 和樹が「バーン」と唱えるが燃えない。何回も試してみるが全く燃えない。


「そういえば魔法って長い呪文を唱える感じだと思っていたけど、こんなに短いのでいいの?」

「簡単な魔法の呪文はそんなものです。癖でつい声に出してしまいますが無詠唱でも出来ますよ」

「そうなんだ」

「最初のうちは詠唱なしで魔法を実行するのは難しいと思いますが、無詠唱も練習したほうが便利ですよ。口に出していたら戦いのときに間に合わない場合もありますから」

「確かに突然襲われたときに間に合わないか」


 和樹はなんとなく納得する。


「魔法の難易度が上がっていくと無詠唱で起動するのは確かに難しくはなりますが……」


 魔法をよく知らない和樹にはユニベルの説明がピンとこないが、この世界では魔法を使えるし魔法が使える方が便利だとはわかる。


「……魔法の基本はイメージなのです。でも最初のうちは唱えた方がやりやすいでしょう」

「わかった。がんばるよ」


 それから和樹は何度も挑戦するが全然ダメ。

 和樹が何度やってもダメなので子供や魔法の実行が苦手な人が使う練習用の魔道具を試してみることになった。

 まず灯りの魔道具を起動できるかどうか試してみる。ユニベルがお手本を見せてくれる。

 魔道具はランタンみたいな形で中央に透明な玉がある。


「魔道具の中心の玉が明るくなるイメージを描いてください」

「ライト」ユニベルが唱えると中心の玉が明るく輝きだす。

「おー! 明るくなった」

「これをお持ちになりイメージしながらライトと唱えてください」


「ライト」和樹が唱えると灯りの魔道具は淡く一瞬点灯するがすぐ消える。

 なんか家電を制御するAIスピーカーみたいだなと和樹は考える、AIスピーカーも使うのに下手な人いるしなと……。

 

「一度、点灯したら持続するように意識して下さい」


 ユニベルが医者が患者に説明するように和樹に向かって丁寧に話してくれる。


「まだ魔力が弱すぎるのでしょう。取りあえず反応はしたので意識して練習すればだんだん明るくなりますよ」


ユニベルは魔道具を和樹に渡す。


「毎日、練習してください。それに木造の小屋で照明として火を使うより灯りの魔道具の方が安全です」


 毎日。練習することになりました、この世界で自立して暮らすなら魔法は使える方が便利だろうと……。

 魔法が使えないといっても魔力が無いということではなく、魔法を実行できる魔力量がないだけ。長年、練習し魔力量を強化して使えるようになる人もいると教えてくれました。


 余談ですがと言いながらユニベルが教えてくれた。ホーリーは上級聖魔法を習得していてネクロマンサーに襲われたときに抗精神魔法と回復魔法を実行していて、気がついたときにもまだ魔法が持続していて精神を失うこともなく、体が腐ることもなかったそうだ、それ以降ずっと抗精神魔法と回復魔法を常時起動し続けているそうだ。ユニベルがホーリーは天才魔法少女なんですと説明する。

 ホーリーが「ム、ムゥ」と言って照れる。


 和樹はリビングデッドだから死なない?、そして常時肉体を回復しているなんてそれって無敵なんじゃないのかなと思ってしまった。ちなみにユニベルも聖属性だそうだ。和樹は聖属性で霊体ってそれって聖霊なんじゃないかなと思う。

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