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城跡

 森に囲まれてそれは在った。

 この世界でやっと見つけた、人の痕跡。

 それは城だった。日本の城ではなく、西洋の石造りの城


 しかし、どう見ても廃墟にしか見えない。ツタが生い茂る城の外壁、壁の表面は風化し苔に覆われている。人がいる気配はない。


「おーい。誰かいますか! あーっ⁈ 日本語じゃわかんないか」


 伸び放題のツタに覆われた城門で中に向かって声をかけるが返事はもちろんない。ツタに埋もれた門の格子にちょうどいい隙間があったのでそこから侵入する。


「内側は外から見るより古びてないな。苔も生えてないし緑も新しい感じだし」


 和樹は城壁の外側と内側の違和感を感じ奥に進む。


「これは居城かな。中は暗くて不気味で入るのはちょっと怖い」


 目の前の大きな建物の中には入らず周りを探りながら歩いて行く。すると居城の裏側の大きな木の傍に石造りの泉があった。


「水だ。それも澄んだ水だ」


 手のひらで掬って飲んでみる。


「美味い!!!」


 がぶがぶと続けて飲んでしまう。「水確保!」と喜びのあまり叫んでしまった。自分の声に吃驚してキョロキョロとあたりを見回す。


「城に人がいたら完全に不審者だと思われるな」


 和樹は警戒する自分を客観的に想像して情けなくて笑ってしまう。


「いやいや。ここは知らない場所、あくまでも慎重に行こう」


 一歩一歩、足を踏みしめるようにゆっくりと先へ進んでいく。もう森に戻るつもりはないので周辺での食料探しを始める。すると木に赤い林檎みたいな実がなっていた。メルキュリロワの記憶なのか見た瞬間、食えると頭に浮かび手が届く実を取って齧る。


「おっ! けっこう美味い!」


 取りあえず十個確保、残りは腐らせないため木に残しておく。


 日が暮れてきたので居城への侵入はあきらめる。だって暗いし怖いし心霊スポット的な場所は苦手だし、出来ればもっと明るいときにしようと思う。


「怖! 不気味すぎる」


 居城沿いに少し進んだら小屋を見つけた。場所的に城の裏庭だろうと思う。城の使用人か庭師の作業部屋だったのか物置だったのか、屋根があるだけありがたい。それに居城の中より恐怖感がない。


 早速、小屋の周りから、いい感じに乾燥した枯れ草を小屋に運びこんで寝床を作る。


「枯葉が乾いていてよかった。これに潜り込んで寝れば少しは温かいだろう」


小屋の扉が使えたのでしっかりした枝を拾ってきて外から開かないように閂を掛けておく。季節は春なのか夜になっても思ったより寒さを心配することもなさそうだった。森で野宿ではなくなり屋根付きの居場所を見つけて安心して寝ることができた。

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