着いたのは深い森
気が付いたら和樹は石の大きな台座に銀色のオベリスクが建っている場所にいた。古い遺跡の跡のようだ。周りは樹木以外なにもない。
「どこだここは? 取り敢えず警察に連絡をしなきゃ」
しかしスマホはなかった。スマホどころかポケットの中には何もない。
「ヤバい! 誰か近くに住んでいる人を見つけて電話を掛けさせてもらわないと」
そこから人を探すために歩き回ったがどこまでも森だった。それもかなり深い森、町や村どころか人の存在する気配が全くない。サバイバル、一人キャンプと言葉が頭に浮かぶ。
サバイバルで思い出すのは水だ。前に読んだ漫画で書いてあった、まずは水の確保、次に食料と安全な居場所だと。和樹は水と居場所の確保のために移動することに。コンビニで買った肉まんとシュークリームのことを歩きながら思い出す。
「あー。買ってすぐ食べとけば良かったな」
水を探しながら歩き続けていると、大型の動物の鳴き声が聞こえてきた。
「やばい、やばい。絶対あの声はやばい」
ビビりながら声が聞こえた方向から遠ざかるように音を立てないように歩く。だんだん声が遠くなっていき安心し立ち止まる。
「絶対、あれ肉食獣でしょ。鳴き声の怖さ半端なかったし」
突然、目の前の木々の間から何か大きなものが現れる。
「うわあ⁉」
和樹は驚き、地面に尻餅をつく。目の前には二メートルを超える巨体、真っ黒な鱗に覆われた皮膚と長い首をしたヴアルトサウルス。
「わっ⁉ あっ⁉」
驚いて尻餅をついた和樹をヴアルトサウルスは真っ赤な両眼で見下ろす。真っ赤に裂けた口をさらに大きく開き。シャーッという声を上げる。
和樹を嚙み砕こうと首を振り下ろす。和樹は恐怖で目をつぶり、食われるのを拒否するように無意識に両手を突き出す。その瞬間、頭髪が銀色に変化し両手の前に白く輝くシールドが現れる。そのままシールドが移動してヴアルトサウルスを弾き飛ばし消える。すると頭髪も元の色に戻る。死を覚悟し目を閉じたままの和樹はヴアルトサウルスが噛みついてこないのでゆっくりと目を開ける。見えたのは木に叩きつけられているヴアルトサウルス。
何が起きたのかわからない和樹だったが、チャンスだと思い逃げ出す。
「うおお!!!」走る。走る。
ヴアルトサウルスが現れた方向とは逆に走るだけ走った。どのぐらい時間が経ったがわからない、へとへとに疲れて走るよりは歩くという速度になったとき開けた場所に出た。