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シチュエーションボイス

依頼用 冬

作者: 月夜黒

えへへ、来ちゃった……


凍てつく空気と冷たい風の中、古びたベンチに腰掛ける



ここは今も変わんないね…

正面には落下防止用の手すりと、無数に並ぶ街の光。

見上げると、宝石を散りばめたかのような満天の星空と、そのてっぺんで月明かりをこぼす半分の月

ここからの景色も、全然変わんないなぁ…


君が教えてくれた、一番星がきれいに見える場所

ここからの景色は、あの頃のまま

まるでここだけは時が動いていないかのよう


けれどあの星たちも、ここから見えるたくさんの光も、あの月も

本当は少しずつどこか違ってて、あの時とは変わってしまってるんだろうね

きっと本当に変わっていないのは、私だけ

私の心だけが時間に取り残されて、まだ数年前のこの場所にいる

もう、あれから5年もたつんだもんね…

いい加減私も前に進まなきゃだよね

いつまでもずっとなくなった時間にすがってたら、君にも呆られちゃうよね…

わかってる…わかってたんだけど…どうしても最後に勇気が欲しくて…だから、少しだけ私の話を聞いてね


偶然か、はたまた必然か、風がひゅうっと音を立てる

聞いてくれる…のかな

ありがとう


私ね、あれから5年、君との約束を忘れたことは一日たりともなかったよ。

君とのこともここでした約束も、とても大事なものだから

だから一人でだって頑張ろうって思ってたんだよ


でも、でもね、君がいないことが、こんなにもつらいなんて想像できなかったんだ…

何をしててもどんな時も考えてしまうのにもう会えなくて、一緒にいられなくて

ただ二人で街を歩くこと。一緒にご飯を食べること。何気ない話をすること

そんな些細なことすらもうできなくて、胸はいつだって締め付けられるのに、こんなに想ってももう君との時間は帰ってこなくて

私の心はもうどうやって一人で生きてきたか忘れてしまったのに君のことを思い出すしかできなくて


これからどうやって頑張っていけばいいんだろうって、君のいない世界を私はどう生きたらいいんだろうって

そんな風に途方に暮れてたら、いつのまにかこんなに時間がたっちゃってた…


でもね、最近久しぶりに昔からの友達と久しぶりに話したとき、

「昔とは価値観とか、考え方とかがすごく変わったね。成長したね」

って言われたんだ。

そのときね、きっと私自身の成長もあるけど君と出会って変わったことが大きいんだろうなって思ったんだ。


きっと君がいなかったら、今の私はいない


君といて、君と過ごした日々があったからこそ今の私がいるんだって。

君はもういないけど、ここにいる私は確かに君の心に影響されて、君との時間に形作られた私なんだって、きづいたんだ


だから、私もくよくよしてばっかじゃだめだよね

だって君が生きた証が私の心に存在して、たとえ隣にいなくても私の心には君との思いがあって今この瞬間も私は君と生きてる

君がここにいるのに、下ばっかり向いてられないよ


だから私、また頑張るね

きっとやっぱり私は私ひとりじゃ生きられないけど、私が生きてる道は一人じゃないって思えたから

少し時間がたっちゃったけど、君と生きた私はもう大丈夫だよ

君がいなくたって、君が示した道を進んできっと私たちの夢をかなえるから

だからもう少しだけ待っててね


星空の中で一つ、尾を引く彗星が輝いた


うん、最後まで聞いてくれてありがとう

体も冷えてきちゃったし、そろそろ行くね

また、話を聞いてくれたらうれしいな

それじゃあ、ばいばい

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