第63話 悪役令嬢は町人Sに叱られる
ユリシーズが続けざまに死呪文を放った。
ここまでして、確殺してくれるのね。
私の方こそ、ユリシーズには感謝の言葉もない。
私の高すぎる抗魔力を考慮すれば、死呪文だけでは心許ないのは私も同じ。
「デゼル、危険だ。今ので三度目の気絶だよ」
「だいじょうぶ、もう少し――」
ベムベムベム
アラート音が聞こえた。
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闇巫女デゼルの意志により一つの命が潰えました。
水神の承認の取消条件にカウントされます。
≪1/1000≫
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あ……。
なんだろう、このもの凄い、ショック。
私、本当に殺したんだ。
何の罪もないこどもを。
「ユリシーズ、ありがとう。――終わった」
涙があふれて止まらない。
「生命の水【Lv10】――水神の名を借りて命ずる、デゼルの身を清め、癒したまえ」
拭っても、拭っても、まだ、涙があふれるのよ。どうして?
「サイファ様、私、サイファ様を闇主から解放できるようになったの。公国の滅亡も、阻止できたの。だから、もう、サイファ様を解放していいよね?」
「何のために? デゼル、僕を闇主から解放したら、死ぬつもりで言ってるんじゃ」
「だって、私、こどもを殺した……! どうして、私、生きてるんだろう。何のために、殺したんだろう。サイファ様を解放できるようになったんだから、こどもだけ、殺す必要なんてなかった! 私が死ねば!!」
パンと、サイファがすごく怒った目をして、私の頬を叩いた。
サイファが私を叩いたのなんて、初めてよ。
「サイファ様……」
「デゼル、デゼルが死ねばよかったなんて、二度と言わないで。言ったはずだよ、僕は解放を望まない。デゼル、着替えてやすまないと駄目だ。生命の水を使ったって」
私の額に手を当てたサイファがかぶりをふった。
「心労でまた、高熱が出てる。デゼルは弱いんだから、無理をしたら駄目だ」
「サイファ様……」
「ずっと、傍にいるから。デゼルが僕を嫌いになるまで」
「……ならない……」
「じゃあ、死ぬまで」
泣いて、泣いて、サイファの胸で泣きじゃくった私は、そのまま気を失ってしまったけど。
二度と戻れないと思ったサイファの腕の中に、戻れた。
それが、言葉にできないくらい、嬉しかったのよ。
ずっと、この場所に戻りたかった。ずっと、サイファに助けて欲しかったのよ。
いつまでも、傍にいて欲しい。
サイファが傍にいてくれたら、サイファが傍で生きていてくれたら、私、他には何もいらないの。
どうか、ずっと――






