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悪役令嬢と十三霊の神々 ~悪役令嬢はどうしても町人Sを救いたい ~  作者: 冴條玲
第二章 魔神ルシフェル来襲 ≪永遠のロマンス≫
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【Side】 主神 ~おいたをする女神にはおしおきを~

「ちょっと、主神、何するのよッ!」


 忘却(レーテー)の力で封印されたデゼルの凄惨な苦痛と悲哀と絶望を、片手でもてあそびながら、私は監獄にとらえたエリスに言った。


「エリス、君がしたことって、反則スレスレというか、アウトじゃない?」

「セーフよ!」

「ふぅん? まぁ、いいけどね。エリスさぁ、慰み者にされてるデゼルにさんざん『今、どんな気持ち?』って、聞いてたよね。そんなに知りたかったなら、余すとこなく教えてあげるよ。神様、親切だから」

「ちょっと、いらないわよ!」

「遠慮しなくていいから。――はい、どうぞ」


 片手でもてあそんでいたそれを、エリスをとらえた監獄に撃ち込んでやる。

 たちまち、エリスが絶叫した。

 だよね~。

 耐えられないよね~、エリスだって。

 別に、エリスは実際のところ犯されてるわけでもなんでもないよ?

 デゼルの認識とエリスの認識の区別がつかないようにして、デゼルが味わった絶望の闇に、エリスの意識を取り込んでやっただけ。

 デゼルと同じ十三日間で解放してあげるけど、まぁ別に、その間に廃神になっちゃったら、それはそれでねぇ? 自業自得ってやつじゃない?

 こんなの、デゼルの方がつらかったに決まってるんだから、手ぬるいくらいのペナルティなんだよ。


 デゼルの絶望はまだ、終わっていないんだから。

 実際に犯されたデゼルの方は、気持ちの問題だけじゃないんだよ。


 だいたいが、ここまでしても、デゼルがどれだけつらかったかなんて、エリスが思い知ることはないんだ。

 災禍(エリス)【Lv10】はデゼルみたいな優しい子には、むご過ぎる呪いなんだよ。

 デゼルはレーテーの祝福を授かってすぐに災禍を封印したけど、エリスの持ち時間である13日の間に、13人の咎人が死んだ。

 犠牲者の1人は皇帝。

 たくさんの人々を苦しめたり殺したりしてきた極悪人だけど、それでもデゼルにとっては、人を(あや)めてしまったことそのものが重いんだ。

 残りの12人はもっとひどい。

 デゼルはならず者達の相手だけじゃなく、彼らに金を払った村人達の相手も強いられていたんだけど、その客がね。

 災禍の呪いで、次々と、ろくな食べ物も与えられず凌辱され続けるデゼルを、なんとかして助けてあげたくなるんだよ。

 彼らがデゼルにまともな食べ物と飲み物を与えたおかげで、デゼルは命をつなげたんだけど。

 デゼルを身受けしたいって、全財産を包んだ村人Aとか村人Bとかが、ならず者達に懇願しにくるんだ。

 ネギ背負ったカモだよ。

 ならず者達は大喜びで、笑いながらカモを殺して金だけ奪った。

 そうやって、デゼルに優しい客を惨殺したばかりのならず者達が、血まみれの手でデゼルを凌辱するんだ。

 デゼルがどんな気持ちで死にたいと泣き叫んでいたのかなんて、ルシフェルに優しさを与えられなかったエリスには、たとえ、同じ目に遭わされたとしてもわかりはしない。エリスじゃ、役に立たなかった犠牲者を(ののし)るだけだ。

 それこそがエリスの不幸だとしても。


 神様ね、怒ってるから。

 私の可愛いデゼルに、よくも、あそこまでしてくれたじゃないか。いい度胸だよ。


「――弱い者いじめは楽しいだろう、主神?」


 げ。


 ちょっと!

 ここでエリスのパパ、復活しちゃう!?


「ルシフェル……!」


 監獄に入れたばかりのエリスを、ほとんどノーペナで出して欲しくないなぁ。

 そうでなくても、こんなペナルティじゃ足りないくらいなのに。


「面白いことをしているじゃないか? 私のエリスに何をしている?」

「~! 出すんなら、二度と私のテリトリーに入ってこないでもらいたいね」


 私がつっけんどんにそう言うと、ルシフェルが面白そうに笑った。


「愛しいエリス、とても美しいよ。たっぷり、主神におしおきしてもらいなさい」


 ちょっと、待って、待ってよ。

 エリス、すごい形相で、美しいなんて状態じゃないよ!? ルシフェルの審美眼、どうなってるの!


「せっかく、こんなに美しく狂っているエリスを出すなんて、そんな、もったいないことを私がすると思うのか?」

「ちょっ……ルシフェル、エリスは愛するお父様の気を引きたくてやってるのに、それはヒドイんじゃない」

「望み通り、愛するお父様の気を引けたんだからエリスは幸せだろう? 素晴らしい表情だよ、エリス」


 あれ、どうしよう。

 なんだか、エリスが可哀相になってきた。

 神様の方が、十三日待てずに、エリスを監獄から出してあげたくなってきた。

 ルシフェルときたら、マジで、エリスの形相をうっとりと見詰めているんだよ。

 変態だよね、このパパ。

 エリスもほんと可哀相だよ。

 ルシフェルに何をされても、ルシフェルを愛するように創造(つく)られているんだから。


「ちょうど退屈していたところだ。エリスを出してもらうまで、ゆっくり、もてなしてもらおうか?」

「……」


 神様、地雷踏んだ?

 エリスを監獄から出すまで、ルシフェルを追い返せないやつ?


 ていうかさ。

 さすがに、エリスが廃神になりそうな時には、助けてあげるために来たんだよね?

 まさか、「一度、廃神が誕生する瞬間をじっくり見てみたかった」とか、エリスを見世物と間違えて見に来たわけじゃないよね?


 神様、ちょっと不安。

 ルシフェルだからなぁ……。


 なんで、私の方がエリスの心配をしてあげないといけないことになってるんだろう。

 だって、さすがに、私はエリスを本気で廃神にしようとまで思ったわけじゃなくて、その、面白半分でやりそうなルシフェルが目の前にいると、なんだかほら。

 このパパ、エリスの狂気を面白がって、ペナルティを重くしたりしかねないんだよ。

 災禍の女神なんてものを、遊びで創造して可愛がってるルシフェルだからなぁ……。




 ――神様、本当はね。

 こんなおしおきじゃなくて、エリスを祝福して優しさを備えてしまいたいんだ。

 だけど、ルシフェルに断りなくそんな真似をしたら、エリスがルシフェルに滅ぼされてしまう。

 だから、この賭け(ゲーム)に勝ちたいんだ。

 神様はエリスを滅ぼしたいわけじゃない。

 滅ぼしたんじゃ、ルシフェルが新しいエリスを創造(つく)るだけ。

 ルシフェルに愛されたくてやってるエリスが可哀相なだけで、何にも、ならないから。

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