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悪役令嬢と十三霊の神々 ~悪役令嬢はどうしても町人Sを救いたい ~  作者: 冴條玲
第二章 魔神ルシフェル来襲 ≪永遠のロマンス≫
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第57話 悪役令嬢は災禍の女神の怒りを買う

 その夜、私は悪夢を見たの。

 悪夢なんて、もう毎晩だったけど。


 身も心も穢されて、手を血に染めた私が、たくさんの人に追われて、追い詰められて殺される夢。

 みんなが私をあざ笑ってた。

 みんなが私に魔女だって石を投げた。

 老若男女を問わず、たくさんの人が私を火あぶりにして殺そうって、追いかけてきた。


 近づけば、私が受ける迫害に巻き込まれて、サイファまでが、たくさんの人に罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせかけられて、石を投げられた。

 サイファの心が、身体が血に染まる。


 ――やめて、サイファは悪くないのよ!


 サイファを庇おうとした私をサイファが庇う。

 私を庇ったサイファの血で、私の手が、視界が血に染まる。


 ――お願い、もう、やめて!!


 苦しい。うまく息ができない。

 涙で霞んで前が見えない。

 お願いよ、殺すなら、私を殺して。サイファに酷いことをしないで!


「夢だと思っているの?」

「エリス様……」


 闇の中、風に髪をたなびかせたエリス様が私を見た。


「これは、これから起きること。夢なんかじゃないのよ? 起きなかった戦争が起きる予定だったことなんて、あなたと神々しか知らない。あなたに守られた人々の誰も、あなたに感謝なんてしないのよ? だって、あなたに守られたことを知らないんだもの。戦争は『起こして』『勝たなきゃ』富も名誉も何ひとつ、あなたのものにはならないの。せっかくの神々からの祝福も、宝の持ち腐れじゃないの」


 殺戮(さつりく)の女神でもあるエリス様が冷たく笑った。


「だけど、あなたがマワされたことはみ~んな知ってる。あなたが、帝国兵の犠牲を抑えるために、闇主たちを使ってしまったからよ。頭の悪いコねぇ、デゼル。そんな真似をしたらどうなるか、想像がつかなかった? あなたはもちろん、サイファだって笑い者よ? みんながサイファに石を投げるわ、楽しそうに嘲笑しながら、情け容赦なくね! 人ってそういうものよ? あなたが守ったのは、そういう連中なの」


 知ってる。

 だから、レーテー様の祝福が必要なの。

 サイファを守るためには、もう、サイファを闇主から解放して、私が死ぬしかないの。


「水神の力で、押し流してしまいなさいよ。彼らを醜いと思わない? ノアの大洪水を起こして、押し流してしまいなさいよ」


 私は微笑んで、首を横にふったの。


 大丈夫よ、私が死ねば、誰も、醜くならない。

 サイファにどんな酷いこともしない。

 サイファは可愛いの。素敵なの。私が傍にいなければモテるの。


 サイファに夢中になってた女の子達のことを思い出したら、涙が零れた。

 とられたくないよ。


 でも、とってもらえば、サイファは私じゃない、優しくて可愛い女の子と、幸せになれるもの。

 ガゼルがきっと、サイファを守ってくれるもの。


 私が死ねば、いいの。


「デゼル!」

「エリス様、私は悪役令嬢デゼルです」

「!?」

「最初から、悪役として死ぬために、この世界に存在しています」

「あなた、何を言っているのよ!」


 サイファの傍で過ごせた三年間、楽しかったな。

 みんな、優しかった。

 ガゼルが必ず、みんなを幸せにしてくれるもの。


「エリス様」

「――なによ」


 私は微笑んで、エリス様を見たの。


「サイファ様とガゼル様を守る方法を教えて下さったこと、ありがとうございました」


 完全攻略ガイドで調べたの。

 エリス様が教えて下さったことは、すべて、本当だった。

 闇巫女が死ぬと闇主も死んでしまうと知らなかったのも、月齢の首飾りの効果を知らなかったのも、私の致命的なミスだったのよ。

 エリス様が教えて下さらなかったら、私きっと、サイファもガゼルも殺してしまっていた。

 災いの神様でも、嘘はひとつも、つかれていなかった。


「デゼル、あなた……! 神に向かって……!!」


 驚いて、私はエリス様を見た。


 どうして、お怒りになるの!?

 私、怒らせるつもりじゃないのよ。


「いいわ、サイファに会わせてあげる。あたしは災禍の神だけど、神は神。サイファを闇主から解放する力くらいあるわよ? あなたがあたしの言う通りにしたら、サイファを解放してあげる。目が覚めるのを、楽しみにしていなさいね?」


==============================

 闇巫女デゼルの災禍がリセットされ、災禍【Lv1】に戻りました。

 ※ 災禍の女神エリスの承認により与えられたSPは、災禍のレベルアップにしか使えません。

==============================


 ――嘘、これは夢なの!?


 サイファに会えるの!? エリス様が、サイファを助けて下さるの!?


「そうね、ガゼルとサイファのうち、一人は先に闇主から解放してあげる。どちらを解放して欲しい?」


 私は夢が覚めてしまうことに恐怖しながら、答えたの。


「ガゼルを」

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