第55話 悪役令嬢は魅了スキルを与えられる
「気持ちよさそうねぇ、デゼル?」
エリス様が私を見下ろして笑った。
どれだけの時間が経ったの? あと何日――
「もっと、気持ちよくしてあげようか?」
身体が反応して、涙を落とした私が絶え絶えに鳴くと、私を犯していた男が悦んで激しさを増した。
「サイファもガゼルも、見つけてくれないわねぇ? 愛されていないわねぇ?」
見つけては駄目。
サイファ達が私を見つけては駄目。
愛されていなくていい、お願い、見つけないで。
また、涙が零れた。
「あと二日よ、気持ちのいい時間って短いでしょう? でもね、デゼル。もっと、幸せにしてあげる。うふふ、あなたが一番、孕みたくない男の子供を必ず孕ませてあげるから。災いの子供が生まれてくるのが楽しみねぇ?」
指が、寝ワラの下の土に食い込んだ。
レーテー様の祝福と承認の条件が、どうか、やさしいものであって欲しい。
クライスが月齢の首飾りをつくってくれるまでの三年間も、私、待てないよ。終わりにしたいの。お願い、助けて。
レーテー様のスキルがあれば、闇主を解放できるの。
そうしたら、私はようやく死を許されるの。
レーテー様、お願い。どうか、はやく終わりに……。
**――*――**
「いい格好だな、デゼル?」
「へへ、兄さんも犯るかい? 金貨三枚でいいぜ?」
近くの川で私を洗いながら犯していた男の頭に、ネプチューンが手をかけた。
「あ゛……?」
その男が死んだのか、意識を失っただけなのか、わからない。
「男を悦ばせるのが上手くなったらしいな、デゼル。俺のことも慰めてみろ」
まだ、涙が零れると思わなかった。
まだ、感情が残っていると思わなかった。
言われるままに、私はしたの。
ネプチューンには見えないらしいエリス様が、そんな私を見て嗤っていたの。
「――デゼル、ユリアが死んだ」
ユリアが死んだ?
私は今、何をしているの。
「公、国は……?」
「続けろ、滅ぼされたくなければ」
私には、自分が何に対して泣いているのかわからなかった。
後から、後から、涙が零れた。
私が言われるままに続けるうちに、ネプチューンが私を川原に押し倒したの。
『どう? ネプチューンは気持ちいいでしょ? デゼルの身体は、ネプチューンが大好きだもの』
エリス様が嗤う。
「…あっ……」
交わった身体の奥から快感が突き上げて、悲鳴を上げて身をよがらせた私をネプチューンが押さえつけた。
「随分、よさそうだな? そんなに好きか、デゼル」
災禍の首飾りが砕けた。
『おめでとう。さぁ、デゼル、あなたのターンよ? お祝いにもっと、感じさせてアゲル♪』
エリス様が手を叩いて笑うと、たまらない快感が襲って、私の身体が私のものではないかのように反応したの。
「あぁっ!!」
私をいいように犯した後、ネプチューンが緑石の首飾りを私にかけた。
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闇巫女デゼルは『ネプチューンの緑石』を手に入れました。
装備中は魅力が一段階上昇し、全体攻撃となる魅了スキル『誘惑』を使用できます。
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「デゼル、皇太子ウラノスを討つ。兵を挙げるから参戦するよう」
「待っ……」
この状態の私に参戦しろって言うの!?
「まずは、闇主どもを奴隷にしてこい」
「――はい」
まだ、涙が零れた。
立つのもやっとの状態だったけど、洞窟に戻って、与えられたばかりのスキルを発動したの。
「――誘惑」
笑えるよね。
気力のかけらもない状態での発動でも、おかしいくらい、一発でかかった。
「ガゼル様と、サイファ様は……?」
「さぁな」
「――もし、帝国にいたら、公国に帰国させて下さい。そうして下さるなら従います」
「ほう?」
「兵を挙げる必要はありません。私と闇主たちで足ります」
ネプチューンが面白そうに笑った。
足りるもの。
どんな状態でも、水神にモードチェンジすれば無敵。
シナリオに守られたネプチューンはともかく、ウラノスなんて、私に遭遇しただけで、きっと、災禍の餌食になって終わるもの。
「いいだろう、やってみろ」
私を抱き上げたネプチューンが、私と闇主たちと、まとめて、空間跳躍をかけた。
丸一日、昏睡した翌日の夜明け前。
私はネプチューンと一緒にグノースに戻って、出払っていた残りのならず者達に同じように誘惑をかけて、帝国に連れてきた。
闇主の力を持ったならず者なんて、放置しておけないもの。
食欲はなかったけど、死なないために、パンとスープを無理やり喉に流し込んだの。
その後、ネプチューンの私邸の水晶を借りてステータス画面を起動して笑った。
ネプチューンが『なかま』になってた。
闇の皇子【Lv50】だって。カンストよ。
ステータスはほぼSで、魔力(魔法攻撃力)と力(物理攻撃力)と体力(HP)と精神力(MP)がSSSだった。
この時点で既に、ラスボスとして完成されたステータスだった。
ねぇ、どこに、兵を挙げる必要があるの?
ネプチューンのステータスは滅茶苦茶よ。
これだったら、もう、ちょっとお兄さんとお父さんの部屋に行ってきて、ちょっと魔法攻撃すればネプチューンの勝ちよ。
闇の十二使徒とか必要ないわよ。
シナリオの呪いなのね。
そういうシナリオだから、必要がなくても兵を挙げて、必要がなくても聖サファイアの人々を苦しめるのね。
私、デゼルでよかった。
ネプチューンがこの世界で一番、呪われていて不幸な人だった。
デゼルのシナリオには、誰かを死なせたり不幸にしたりする方向の強制力は一切ないもの。
私、デゼルでよかった。






