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悪役令嬢と十三霊の神々 ~悪役令嬢はどうしても町人Sを救いたい ~  作者: 冴條玲
第二章 魔神ルシフェル来襲 ≪永遠のロマンス≫
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【Side】 主神 ~神様の真の望みは~

「あああぁああああ!!」


 耳を塞いだレーテーが、ガクガク震えながら悲鳴を上げた。

 デゼルがエリスの祝福を受けてから七日が経って、ついに、夜明けの守護が失われたんだ。


 デゼルはもう、このところは心も感覚もマヒして、サイファ達を闇主から解放して死ねる日の訪れだけを願って、絶望の中に安定していたんだけど。

 夜明けの守護は、サイファに抱かれてさえ感じなくなるほどのもの。

 それが失われて、生々しくおぞましい感覚から逃れることも、身体のダメージをガゼルに引き受けてもらうこともできなくなったデゼルの、より苛烈な魂の絶叫がレーテーを直撃しているんだ。


「いやだ! もう、いやだ!! やめて、主神、もうやめてあげてよ!! デゼルを殺してあげて!! あぁあああ!!」


 だいたい、シナリオ通りなら十日もならず者達の慰み者にされたりしないんだ。

 十歳児の体力がそんなに持つわけないでしょ。それじゃ死んじゃう。

 三日のはずだったのに、まず、デゼルを見つける予定のネプチューンが公国にいない。これはデゼルが侵略戦争を阻止したせいなんだけど。

 さらに、デゼルがグノースにいることに脈絡がなさすぎて、サイファ達が見つけられない。

 デゼルの苦しみが三日で済むためには、公国が滅びるか、デゼルを見つけたサイファ達が災禍の犠牲になって死ななきゃならなかったってことだから、あの子はきっと、それと引き換えだったら、これでよかったって言うんだろうけど。


 レーテーの精神防御力は、司る力の性質上、私の配下の十二霊の中で最も低い。

 そこへきて、デゼルがレーテーの加護を強く願い求めているために、耳を塞いでもレーテーには聴こえるんだ。死にたい、助けてと懇願する、デゼルの魂の悲痛な叫びが。

 このままじゃ、レーテーが廃神になりかねない。

 アフロディーテがレーテーを抱き締めてあげてはいるけど、これ、マズいよ。


 それでも私は。


 エリスの注意がデゼルに向いているのを確認すると、そっと、二霊を召喚した。


「アテナ、エリスに気取られないよう、ガゼルのミスリードを頼む。ガゼルとサイファがデゼルを見つけられないように」

「かしこまりました」


 神様、デゼルに意地悪してるわけじゃないよ。

 デゼルがレーテーの祝福を授かる前に、サイファ達がデゼルを見つけてしまうと、デゼルがここまでの思いをして守ろうとしているサイファ達の命が災禍に奪われてしまうから。

 それじゃ、あんまり可哀相だから。


 友神が十二霊もいると、こういう時には助かる。


「テュケー、ネプチューンをグノースへ誘導。シナリオ通りに。『公国は滅ばない』」

「御意」


 すでにユリアが転生したため、公国の滅亡はキャンセルで確定した。

 デゼル、君がこの三年間、頑張ってきたことは報われたんだ。


 神界で、私と一緒にだべっていることが多いのは、アフロディーテ、マルス、レーテーあたり。

 このあたりがいないと、私が何かやらせてるって、エリスにバレバレだけど。

 アテナやテュケーは滅多に、こんなところでだべってはいない。


 なんだか、ここでだべっている私達がナマケモノみたいな言い方になってしまった。

 まぁ、それはいい。


「レーテー」


 アフロディーテにしがみついて泣き喚いているレーテーに、私は言った。


「仮にも神だろう。デゼルが耐えていることに、神が耐えられなくてどうするんだ。神にとっては『たったの十三日間』だろう?」

「なんで……なんで、助けてあげたらいけないの!? デゼルもぼくも、何のために耐えることを強いられてるの!?」


 ぐっ……。


「主神」


 うわっ。マルスがすっごく怒ってる!

 ものすごい目で神様を睨んでる!


「あなたにとって、ルシフェル様に敗北を認めたくないという意地は、デゼルとレーテーにここまでの辛酸を舐めさせてまでも、貫く価値のあるものだと仰るんですか」


 ぐっ……。


 意地も、それはあるけどね。


「それだけじゃ、ないよ」

「他にどんな意味が」


 私は黙った。

 私がここまでのことをしている本当の理由なんて――


 エリスに滅ぼされかけたマルスに、言えるわけがないんだ。

 エリスにここまでの苦しみを与えられているデゼルとレーテーに、言えるわけがないんだ。






 ――私は、エリスを永遠の呪いから解放したい。


 なんてね。

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