第4話 闇巫女と闇主
どうしたらいいのか、一晩、じっくり考えて、私はまずサイファに話してみることにしたの。
だけど、サイファとはいつでも会えるわけじゃないから、別の布石も打っておかなくちゃ。
「マリベル様、神のお告げがありました」
「おお、なんと」
私はヒロインが最後に手にするべき『聖女の杖』の在り処を神官長のマリベル様に教えて、取ってきて下さるようにお願いしてみた。
最初から最強の杖を手に入れるためというより、まずは、私の神託を本物だと信じてもらうためね。
だから、取ってこられなくてもいいの。
私が予言した通りの場所に、私が予言した通りの聖杖があることを確認できれば、まずは御の字よ。
それに、私が聖女の杖を持っていれば、いずれ、聖女に転生した京奈の方から私に会いにきてくれるはず。
水戸の黄門様よろしく、世界中を旅して回って、不幸な人達を助けまくり、攻略対象者たちとの思い出を増やしまくるヒロインをつかまえるのは、なかなか、骨が折れそうだもの。
ヒロインが誰をどういう順序で助けるかにシナリオはないのね。
**――*――**
「サイファ!」
私がようやくサイファと会えたのは、洗礼を受けた三日後のこと。
嬉しくて、笑顔で手をふって、大きな声で呼んだの。
「おとなになったら、デゼルを迎えて下さるって、デゼルは意味がわかりました! でも、今すぐに迎えてほしいの」
「デゼル?」
サイファのびっくりした顔も可愛い。
「サイファ、デゼルは洗礼を受けて闇巫女としての魔力が目覚めたの。それで、この国が滅ぼされる未来を知ってしまったの」
「えぇ!?」
「デゼルは公国を救いたい。サイファにも助けて欲しいの。だけど、私達はまだ子供だから、無理かもしれない。どうしよう、サイファはどう思う? 二人で逃げた方がいいのかな」
サイファはとにかくと、公園の芝生に私を座らせた。
私が闇巫女なのを知っているサイファは、割とすんなり信じてくれたけど、こんな話、通りすがりの人に聞かれたら頭がおかしいと……は、思われないよね。七歳と十歳の子供だもの。何かの遊びだと思われるだけね。
三年後に何が起こるのか、知る限りのことを詳しく話してみると、サイファは難しい顔をして考え込んだの。
そうして、考えて、考えて、言ったのよ。
「三年後じゃ、僕はまだデゼルを守れない。だから、デゼルのためには、一緒に逃げるのがいいんだと思う――」
サイファが優しく私の手を取って、でもねと続けた。
「きっと、うまく行かないと思うけど、それでも、デゼルが命を懸けてもいいと思ってくれるなら――僕はデゼルと一緒に、公国を救う努力をしてみたい」
あ、素敵すぎてめまいがしそう。
ああ、サイファ様ならきっと、誰よりも立派な闇主になれてよ。
ゲームでは名前もグラフィックも用意されていなかった町人Sにすぎないサイファ様の、なんて、神々しいことかしら!
闇主というのは、闇巫女と契りを交わして闇魔法の力を得た者のこと。
だから、三年後じゃまだ無理なのが残念だけど。
「ありがとう、サイファ様」
「サイファ様って」
嬉しくて、なんで様がついたのと、困った様子のサイファにぎゅっと抱きついたの。
「そうだ、サイファ様、デゼルの家庭教師になって頂けませんか?」
「えっ」
いざ、会おうとしてみると、なかなか会えなかったんだもの。
いつでも神殿を抜け出せるわけじゃないし、サイファだって、いつでも公園にいてくれるわけじゃないし。
「それと――」
私は意を決して、サイファの瞳を真っ直ぐに見詰めたの。
とっても綺麗な、透明感のある翠色の瞳。
【挿絵】なかいのぶ様






